悪性リンパ腫の2回目の化学療法中の患者。治療後のCTの結果肺に転移が見られ放射線療法も追加されました。
放射線療法30回実施予定中20回終了後、患者さんから「なんだか背中だけ少しヒリヒリするかな。でも治療っていっても寝ているだけだし。あとは変わりないよ」と話されています。
さて、この状況患者さんにはどんなことがおきているでしょうか?そして、どういうケアを行いますか?
1.状況と治療の背景
この患者さんは、放射線治療前の化学療法による皮膚のターンオーバーの遅延の状態にあり、その後の放射線療法による皮膚損傷が疑われます。放射線療法は、がん細胞を減少させるために放射線を患部に照射する治療法であり、体外からの照射により腫瘍に放射線を当てます。
しかし、放射線は通り抜けた体の表面から内部にも皮膚損傷を引き起こす可能性があります。
そのため、内部の症状も検討し、適切な対処が必要です。
2.皮膚損傷とその対処法
皮膚損傷は早期の対症療法が必要です。一度損傷が起きると皮膚の自然治癒を待たねばなりません。放射線療法による皮膚損傷が表面の損傷の場合は軟膏などで対応可能ですが、治療が難しいのは内部の損傷です。内部の皮膚損傷は、症状が進行すると食事摂取が困難になることもあります。このため患者さんには症状がたとえ軽度でも早めに皮膚や粘膜を保護することが大切であり、その必要性を伝えることが大切です。
内部の皮膚損傷は自覚しにくいうえ、気づいた時には損傷が進んでいることが多いです。私自身、放射線治療中の患者さんがパンのみみを食べて食道に傷がつき、その後禁食になったケースを経験しています。主な内部の皮膚損傷の自覚症状は、食べ物や唾の飲み込み時の違和感や胸焼けなどです。患者さんとの会話を通じて、内部の症状の有無を確認し、適切な対応を行いましょう。
3.患者さんへの説明は?
患者さんには皮膚損傷の治療の困難さを理解していただいたうえで治療に臨むようサポートしていくことが大切です。
具体的に患者さんには「看護師さんは脅しすぎだ」と言われたこともあります。しかし、その後には「やっぱり看護師さんのいうとおりだった」と言われたこともありました。いかに患者さんがイメージしやすく事前に説明できるかは、医療知識を踏まえた看護の力が必要になると私は思います。
【まとめ】
– 患者の化学療法後の皮膚遅延から放射線損傷疑われる。
– 放射線治療はがん細胞を減少させるが、皮膚損傷のリスクが非常に高い。
– 内部損傷は食事摂取に影響することも。早期の対症療法と患者サポートが大切。