患者さんや家族へのケアで悩む場面は多々ありますが、特に患者さんが亡くなったは「これでよかったのか?」と悩むこともあるのではないでしょうか?
急に亡くなった方、長期の看取りを行った方、家で最期を迎えた方、それぞれ状況は異なります。
グリーフケアは、そのような悩みや不安を抱える家族や医療スタッフにとっても有効です。
今回、3人の看護師がグリーフケアについての経験や思いを共有しました。この座談会が、新人看護師の皆さんが患者さんや家族にどう声をかければよいか迷ったときの参考になれば幸いです。
【座談会メンバー】
Aさん(大野さん)
看護師歴:24年 病院・重度身体障害者施設を経験。現在クリニック勤務。
Bさん(赤川さん)
総合病院にて救急・ICU・血液内科などを経験。現在ICU勤務。
Cさん(東さん)
看護師歴15年、オペ室・外科病棟、デイサービスを経験。現在訪問看護ステーション勤務。
グリーフケアの重要性とその難しさ: 看護師家族の経験談
看護師A
私は昨年自宅で父を見取りました。
私の場合、父はゆっくり病状が悪化したため家族内で延命せず自宅で看取ることに決めていました。
しかし状態が急変しいざ亡くなっていく瞬間に、母は『生きていてほしい。なんとか生かすことはできないのか?』と医師に訴えていました。私自身は母の行動に驚く反面、『延命を選択せず看取ったことは正解だったのだろうか?』心が揺れ動きました。
家族として生きていてほしいと願うのは当然です。しかし医療的に延命することが想像きるわたしにとってそれは母が望んだ延命でないことを解ったとしていても気持ちが揺れ動いた経験です。
私のように医療知識があっても心が揺れたのですから、知識がない方や急な病状の変化で延命か尊厳か選択する場面に遭遇する方は、気持ちが大きく揺れる思います。グリーフケアの視点でどう考えるべきだったのか今でも悩んでます。
看護師B
心が揺れ動いて、延命治療を選択することを選んだり、選択を変えたりすることはいいと思います。否定的になってしまう方が多いので、家族に対して寄り添う、肯定することが大切だ思います。
例えば
・何もできなかった⇨何もしないことを選択した
・〇〇してしまった ⇨〇〇を選択したからよかった
このように寄り添って肯定することを意識しています。
たとえ看護師でも「これでよかったのかな」とモヤモヤする瞬間はあります。
スタッフ自身もグリーフケアを意識し互いに気持ちを言葉を含め表出し肯定し支え合うことが大切です。 死に向かう過程で心情が変化したり希望を持ったりすることはどんな人でも当たり前なんです。
看護師A
そうですよね、患者さんの意思を尊重しつつ、残された家族への寄り添い家族の気持ちの受け止めをしていくことが重要ですね。
訪問看護でのグリーフケア
看護師C
私が勤めている訪問看護ステーションでは、亡くなった方の家庭に数日から1ヶ月経ってから訪問するようにしています。1ヶ月経過すると気持ちが落ち着いている家族が多いです。その際、気持ちに寄り添い、労る言葉をかけることを意識しています。よく聞く言葉は、『本当にこれでよかったのかな』とか『病院に行っていたらもっと長く生きられたのかな』です。長期にわたって介護をした家族へ労いの言葉をかけ、傾聴しています。誰にでも話せるわけではないので、思いを聞き、心の整理をすることで家族が前向きに進めるようにサポートしています。
看護師B
病院で亡くなったときは、家族の気持ちや時間の経過とともに変化する心情を聴く機会が少ないですよね。訪問看護だからこそ、その後の経過や家族の思いを聞くことができるのが羨ましいです。さすがに病院ではここまでのケアはできませんね。やはり自宅でグリーフケアを行うことがポイントですか?
看護師C
そうですね、訪問看護の場は家族がリラックスした環境であるからこそ話しやすいですし、家族の気持ちに寄り添いやすいです。訪問時に家族の話を聞くことで想像以上に家族の心のケアに繋がっていると実感しています。
看護師B
訪問看護におけるグリーフケアは、家族の心のケアに非常に重要ですね。家族の気持ちに寄り添い、労る言葉をかけ、心の整理をサポートすることで、家族が前向きに進めるよう支援しているのが素晴らしいです。このケアが病院や施設でもできるようになるとよいのでしょうね。