2024年度の診療報酬改定を受け、身体拘束の削減がますます求められています。
今回は診療報酬改定で身体拘束について何が変わったのか、そしてその影響について3人の看護師間で座談会を行いました。
診療報酬の入院基本料が変更され、新たな基準が導入されました。この改定により、身体拘束の最小化が原則となり、基準を満たせない場合、入院基本料が減算されることになります。この変更が病院や現場の医療従事者にどのような影響を与えるのか、詳しく見ていきましょう。
【座談会メンバー】
Aさん
看護師歴20年以上。
大学病院、総合病院、中小規模病院に老人福祉施設など、さまざまな医療機関などでの勤務歴あり。
小規模病院での看護部長経験もあり。様々な視点で看護を見てきました
Bさん
看護師歴23年。病院や重度身体障害者施設で経験あり。
Cさん
8年のブランクを経て総合病院に復帰。現在は整形病棟に勤務。
診療報酬改定で身体拘束について何が変わった?
看護師A
今回、診療報酬の入院基本料が変更になりました。身体拘束の最小化が原則で、身体拘束最小化のための基準(図表)が満たせない場合、入院基本料が1日40点減算になります。
【身体的拘束最小化の基準】
- 緊急時以外の身体的拘束禁止
- 拘束時の記録義務、専任チームの設置と管理
- 拘束状況の周知と指針の作成・見直し
- 精神科は別法適用 経過措置は令和7年5月31日までです。
看護師C
1日40点とはいえ対策をせず減算になれば、患者人数と在院日数を考えると相当な費用になりますね。 次に、診療報酬改定の意味と病院格差について詳しく見ていきましょう。
その診療報酬改定って意味ある?身体拘束に関する病院格差
看護師B
私が勤務した病院は、診療報酬改定以前から身体拘束に関するマニュアルがあり、アセスメントをした上で身体抑制を実施し記録をしていました。もともと十分仕組み化がされているのではないでしょうか?
看護師A
勤め先次第ですね。以前、10床しかない慢性期病院で勤務していましたが、規模が小さくなるほど、ブラックボックス化されてしまいます。東京都は200床以下の病院が7割と言われています。大きい医療機関に比べ、小さい医療機関は仕組み化できる人員も限られていて、解釈を誤ったまま突き進むケースも見受けられました。定期的な診療報酬改定は間違いを是正する意味合いもあると思います。
次に、診療報酬改定がスタッフにどのように関わってくるのかを見ていきます。
診療報酬改定は一スタッフには関係ない?
看護師B
今回、こういう機会がなければ、診療報酬について知らないままでした。
看護師A
私も役職につくまで詳しく知りませんでした。しかし、自分がスタッフに周知する側になり、理解していてもスタッフに伝えていく作業はとても苦労しました。日本の医療の在り方や制度を決める人の思いが、現場で働く医療従事者に伝わらないまま実行されているのが現状であり問題点だと思っています。
看護師B
現場で働く人、経営側の人、国でルールを決める人では、目線が全然違いますね。
看護師A
管理する人たちが興味を持って調べなければ、正しく把握しないまま算定し続けますし、管理をする人たちが把握しても、下まで伝える努力が十分でなければうまく伝わりません。その弊害が現場で働く看護師や患者さんに来ています。
看護師C
人手不足で身体拘束をしないと危険が生じるケースもあります。本来の目的から外れた身体拘束は問題ですが、国には現場の実情にも歩み寄ってもらいたいです。私たちも国がやりたいことを現場に落とし込む必要がありますね。国も現場を見てフィードバックしてもらいたいです。現場の思いを伝えられる場があればいいのにと思います。