2024年度の診療報酬改定を受け、身体拘束の削減がますます求められています。身体拘束の現状や課題について、さまざまな勤務経験を持つ看護師たちが議論しました。安全確保と尊厳の保持はどちらが大事?など
身体拘束に関する疑問が解消できる内容となっています。明日から現場で役立つ貴重なアドバイスが詰まった、実践的な座談会をお届けします。
【座談会メンバー】
Aさん
看護師歴20年以上。
大学病院、総合病院、中小規模病院に老人福祉施設など、さまざまな医療機関などでの勤務歴あり。
小規模病院での看護部長経験もあり。様々な視点で看護を見てきました
Bさん
看護師歴23年。病院や重度身体障害者施設で経験あり。
Cさん
8年のブランクを経て総合病院に復帰。現在は整形病棟に勤務。
身体拘束の現状
看護師B
身体拘束はできるだけしたくないという思いがありましたが、急性期病院では「せざるを得ない」という患者さんも多かったです。ただ、点滴やドレーンの抜去防止のための身体拘束が、オムツを外されないために行われている場面もあり、ちょっと違うよねと思った経験があります。オムツを外されて業務量が増えるという気持ちも分かるのですが…。
看護師A
安全確保のための抑制が、人手不足という理由で行われているのは問題ですね。
看護師C
整形病棟では施設で徘徊し、転倒して入院になったという方が多いです。抑制を使用しても、すり抜けてベッドから転落するケースも結構あります。ベッドに押さえつけられると、患者さんも嫌になって余計にすり抜けてしまうのかもと思ったり…。どうしたらいいのかなと思います。
看護師B
悪循環ですね。身体拘束には論点が様々ありますね。
看護師C
病棟の勉強会では、抑制することによって生じる事故の症例を紹介する予定で、病院としても適正な抑制を目指す方針になっています。
看護師B
私の勤務していた病院では抑制の必要性について共有していました。併せて、身体拘束が必要な場合に速やかに対応できるようにしておく、身体拘束のリスクを家族に説明して同意を得ておくなどしていますね。
身体拘束の課題:安全確保と尊厳の保持どっちが大事?
看護師A
国は身体拘束の最小化を目指して取り組んできていたので、その取り組みができない場合は減算というペナルティが設定されたのは、単にダメと言われた時代から一歩進んだのかなと思います。
看護師B
国の方針は正論だと思います。ただ、患者さんの尊厳を保つために身体拘束をしないということは、その分転倒のリスクが高まるのも事実です。
看護師A
転倒は医療事故ですから、医療従事者は転倒を予防するために身体拘束をしている部分もありますよね。訴えられたくない。訴えられないまでにしろ、家族が言ってくるかもしれない。だから、「転ばないようにしよう」というのは、個人の判断だけじゃなく、病院の判断としても選びがちかなと思いますね。
看護師B
家族の認識をどう変えていくかは課題ですね。看護師の同僚から、自分の親が身体拘束をされてショックだったという話を聞いたんですよね。必要性を理解していても、立ち位置によって考え方は変わるのだなと思いました。これを擦り合わせていくのは大変だなと思ったと同時に、だからこそ基準が大事なんだろうなと思いました。それを家族に理解してもらう…難しい話ですね。
看護師C
「転びそうだから抑制をします」に対して、家族にどう根拠を説明するか難しいなと感じてます。
看護師B
分かります。患者さんの尊厳は大事ですが、安全確保も同時にとても大事。どうしたらいいんだって思いますよね。結局は、上手に説明することが大切なんだと思います。必要性を説明して、抑制をどうしてもしたくない場合は、家族にどこまでご協力できますかと提案をする。そうやって妥協点を見つけていくことが必要ですね。