在宅で生活をしている脊髄損傷患者さんは、障害を抱えながらどのように日々の生活を送っているのでしょうか。脊髄損傷による排泄障害やADL低下、痛みなどとうまく付き合いながら生活しています。脊髄損傷患者が日々の生活を送るためにどのような支援ができるでしょうか。この記事でご紹介したいと思います。
脊髄損傷患者さんの排便コントロールについて

脊髄を損傷すると、便が溜まっても便意を感じにくかったり、便意があってもすぐに排泄できなかったりと、排泄に関するさまざまな問題が起こることがよくあります。
そのため、あらかじめ排便日を決め、たとえば2日おきなどのスケジュールに基づいて排便を行うケアが必要になります。多くの患者さんは、排便日にできるだけ便を完全に出し切ろうとしますが、その結果、長時間トイレに座り続けることがあります。このような長時間の座位は、褥瘡(床ずれ)を引き起こす原因となることがあります。
排便のコントロールは、脊髄損傷患者さんの生活の質に大きな影響を与える重要な課題です。看護師としては、患者さんの排便状況をしっかりと観察し、適切なサポートを提供することが求められます。
訪問看護の現場では、腹部マッサージや摘便を通じて排便を促すことがありますが、毎回うまく排便ができるとは限りませんし、時間の制約もあります。そのため、排便日には下剤の使用や食事の調整を行い、さらに訪問看護の介入時間についても、患者さんやご家族と相談して調整していくことが大切です。
思うように動けない辛さ

脊髄損傷患者さんは、受傷前と比べてどこかしらの身体機能に障害が現れることがあります。特に頸髄損傷では、車いす生活を余儀なくされる場合もあります。上肢が動かせても、指の巧緻性(細かい動作の調整能力)が失われ、以前はできていたことができなくなり、その結果、悲しみやストレスを抱えながら生活している方が多くいます。
私が関わっていた患者さんも、若い頃に脊髄損傷を負い、数十年間にわたって車いすで生活をされていました。しかし、加齢とともに筋力が低下し、体が思うように動かないことに強いもどかしさを感じていました。その結果、「こんなことならもう死にたい」「生きていても辛い」といった悲観的な発言が増えていきました。
この患者さんには、訪問看護として気持ちに寄り添い、しっかりと傾聴することが大切でした。また、リハビリスタッフと連携し、残された筋力を維持できるようなリハビリ内容の検討を行い、情報を共有しました。
このように、失われた機能にどのように寄り添っていけるかが、看護師にとって重要な課題です。患者さんの身体的・精神的なケアをしっかりと行うことが、生活の質の向上に繋がります。
肩や関節の痛みを悪化させないために

下半身麻痺の患者さんは、車椅子での生活を余儀なくされることが多くなります。自力で車椅子へ移乗できる方もいますが、その際には上肢に大きな負担がかかります。若い頃には筋力があり問題なく移乗できていた方でも、年齢を重ねると筋力が低下し、肩や肘の関節に負担がかかりやすくなります。
その結果、肩や肘に痛みが生じ、移乗が苦痛になることで、臥床(ベッドにいる状態)の時間が長くなる方も多くなってしまいます。臥床の時間が増えると、さらに筋力が低下し、寝たきりのリスクが高まる可能性があります。
訪問看護や他のサービスを利用する際には、できるだけ身体を動かす時間を確保し、寝たきりを予防することが重要です。患者さんの状態に合わせて、適切な運動や関節ケアを行い、痛みを軽減しながら生活の質を向上させることを目指しましょう。
【まとめ】
-排便コントロールは課題のひとつ。訪問時間を検討して対応することも必要。
-思い通りに動けない辛い気持ちに寄り添い、多職種と連携して多角的なケア介入を。
-筋力低下を防ぐための関わりをして、痛みの増悪を予防。