NPPV(Noninvasive Positive Pressure Ventilation:非侵襲的陽圧換気療法)は、鼻や口をマスクで覆って陽圧換気を行い、呼吸を補助する治療法です。
気管内挿管や気管切開を伴う呼吸器療法に比べると、コミュニケーションが取りやすく、飲食ができるなどのメリットがあります。
一方で、誤嚥や皮膚トラブルといった合併症を起こすおそれがあり、患者の様子を注意深く観察する必要があります。
この記事では、患者が安全にNPPVを使用するための観察項目を5つ紹介します。
1.呼吸・循環動態は安定しているか?

NPPV導入直後は、呼吸状態や循環動態が不安定になりやすい状況です。呼吸状態が悪化すれば、気管内挿管が必要になる可能性もあります。
意識レベルやバイタルサイン、呼吸音、換気量やリーク量など、患者の全身状態を注意深く観察しましょう。
2.マスク関連のトラブルはないか?
マスクが患者に合っていないと、マスク周囲からのリークが増えたり、皮膚トラブルが発生したりします。
効果的な換気ができるよう、マスクの種類やサイズ、ストラップの調整が必要です。
マスクが当たる部分には、クッション性のあるドレッシング剤などを貼付して、MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)を予防します。
3.患者の苦痛を最小限にできているか?

NPPVの使用中は、マスクを長時間装着することによる閉塞感や、目やのど、鼻の乾燥などにより、患者の不快感が強くなります。
不穏やせん妄を引き起こすおそれもあるため、患者の表情をよく観察し、不安や苦痛を最小限にできるよう援助します。
会話しにくいため、必要に応じて文字盤や筆談、ジェスチャーなどでスムーズなコミュニケーションが取れるよう配慮しましょう。
4.十分な排痰ができているか?
口を覆うタイプのマスクを装着していると、思うように痰が自己喀出できず、痰詰まりや誤嚥を起こす可能性があります。
呼吸音や胸部XP所見も確認しながら、必要に応じて体位ドレナージや吸引を併用して、排痰を促しましょう。
5.空気を大量に飲み込んでいないか?

マスクから送気されるガスが消化管に流入しやすいため、胃部が膨満して嘔吐や誤嚥を引き起こすおそれがあります。
NPPVの導入直後で呼吸のタイミングが合わない場合や、エアリークに機器が対応するため送気される空気量が増加している場合は、とくに空気嚥下しやすいため注意が必要です。
胃管が挿入されていない場合はげっぷを促し、便秘にならないよう排便コントロールを行います。
患者が安全にNPPVによる治療を受けられるよう、これらの観察項目を理解し、日々のケアに活かしてください。
【まとめ】
- ①呼吸・循環動態
- ②マスク関連トラブルの有無
- ③不安や苦痛、不快感の有無
- ④排痰状況
- ⑤空気嚥下の有無