人工呼吸器とネーザルハイフロー。見た目も使い方も違うこの2つ。呼吸を管理するという共通目的の医療機器ですが「何が違うのか」を一言で説明するのは案外難しいものです。そんな人工呼吸器とネーザルハイフローの違いを、今回は「呼吸仕事量」という視点から整理してみます。
1.呼吸仕事量とは?

呼吸仕事量とは「呼吸をするために患者自身が使うエネルギーや努力」のことを示します。健康な人なら無意識でできる呼吸も、呼吸不全の患者では大きな負担になります。
2.仕事を代わる人工呼吸器

人工呼吸器(特に挿管管理)は、患者の呼吸仕事量を大幅に軽減する治療法です。設定によっては自発呼吸を一時的に停止させ、完全に人工呼吸器で換気を担うことも可能。つまり、呼吸筋を「休ませる」ことができる治療です。
3.仕事を軽くするネーザルハイフロー
ネーザルハイフローは高流量酸素で患者の呼吸をサポートする治療です。
- ・鼻腔内デッドスペースの洗浄
- ・適度なPEEP効果
- ・吸気抵抗の軽減
これらによって呼吸が楽になるようサポートします。しかし呼吸そのものは患者自身が行っている状況です。したがって患者の呼吸努力をゼロにはせず、あくまで「助ける」治療といえます。
4. ケアの観察点も変わる

呼吸仕事量の視点から見ると、看護師の観察ポイントも変わってきます。人工呼吸器では「適切に休めているか(鎮静・換気量など)」が中心ですが、ネーザルハイフローでは「呼吸を頑張りすぎていないか(呼吸数・努力呼吸・疲労兆候)」が重要です。呼吸数や胸郭の動き、会話時の息切れなど、自発呼吸だからこそ見える「負荷」に注目する視点が求められます。
【まとめ】
人工呼吸器とハイフロー。
両者の違いの1つには「呼吸仕事量をどれだけ軽くできるか」という視点があります。この視点をもつことで、患者の状態理解も、看護の判断も、きっと変わってくるでしょう。