【看護師国家試験 第109回 午後72】在宅で高齢者の食事介助に困ったら|相談・対応のポイント

国家試験対策
2026.03.29
0件のコメント

脳梗塞の高齢者で「口の中に食べ物が残る」と聞くと、「一度に食べる量が多いのではないか」という考えからつい食事量を減らせば良いと判断してしまう人は少なくないでしょう。
口腔残渣が起こる原因は、食べる量だけでなく、嚥下機能の低下や咀嚼能力の問題などさまざまな要素が関係しています。ここで問われているのは食べる量の検討ではなく、口腔残渣が起こる原因をどうアセスメントするかという視点です。嚥下の仕組みを理解したうえで、残渣の原因に応じた対応が重要となります。


解説

なぜ③を選びたくなるのか?【学生が迷うポイント】
Aさんは脳梗塞の既往があり、口の中に食べ物が残ることが多いと妻から相談されています。この文章から「口に入れる量問題

Aさん(78歳、男性)は、妻(75歳)と2人暮らし。脳梗塞の既往がある。妻から「最近、夫は食事をむせずに食べることができるが、口の中に食べ物が残っていることが多い。夫の食事について助言が欲しい」と訪問看護師に相談があった。
妻への訪問看護師の助言で適切なのはどれか。

1.「食事にとろみをつけましょう」
2.「自助具を使って食事をしましょう」
3.「口に入れる1回量を少なくしましょう」
4.「食事前に舌の動きを促す運動をしましょう」

正解:④ 「食事前に舌の動きを促す運動をしましょう」

を減らせばいいのではないか」と考えがちですが、脳梗塞の既往がある場合には、舌や口の運動麻痺などの原因が隠れていることをまず考えることが大切です。

なぜ③「1回量を少なくする」は不十分なのか【病態生理】
ここで整理したいのは、Aさんのどの嚥下期に問題があるかという視点です。
事例では、

・むせずに食事はできている
・口腔内に食べ物が残る

と書かれています。
むせがないということが重要なカギです。
むせがないということは、誤嚥リスクは目立っていない、つまり咽頭期の問題で食べ物が残っているわけではないことが推察できます。
一方、口の中に食べ物が残る状態は、

・舌で食塊をまとめにくい
・舌で咽頭へ送り込む力が弱い

といった口腔期の機能低下を示唆します。
③は「食べ方の工夫」ではありますが、舌の力が弱くなっている状況では、いくら食べる量を減らしても口の中に残渣が残ります。舌の機能の改善が重要で、③は根本的な解決に結びつきにくいといえます。

他の選択肢が不適切な理由

「むせていない」「誤嚥していない」が状況として挙げられており、咽頭期に問題がないと判断できます。とろみは基本的には咽頭期に問題がありむせる場合に用います。よって①「食事にとろみをつけましょう」がまず除外できます。

②「自助具を使って食事をしましょう」に関して、自助具は上肢やADLに問題があるときに使用するもので、今のAさんの状況を解決するツールではありません。

正解④を選ぶポイント

Aさんが食事時むせていないということは、咽頭期の問題は目立たないと判断できます。一方で、口腔内残渣があるということは、口腔期の機能低下が疑われます。脳梗塞の既往もあり、舌の運動機能や食物の送り込み機能が低下しやすいと考えられます。

つまり、問題は「食べる量」ではなく「舌の動き」なのです。むせていないという情報は、咽頭期ではなく口腔期に着目せよというヒントです。嚥下機能のどの部分に問題があるかを見極める力が問われています。

よって、④「食事前に舌の動きを促す運動をしましょう」が最も適切な助言となります。

現場でどう声をかける?

妻は「口に食べ物が残ることが多く不安」「どうすればよいかわからない」と不安の表現をしています。
ここで突然、
「舌の運動をしてください」
「口腔機能が低下しています」

などの声かけをするとさらに不安を増強させ、責められた気持ちに感じる人もいるかもしれません。
専門用語は使わず、状態をやさしい言葉で説明しましょう。
声かけの例として、
「今の様子を聞くと、呑み込みが悪いというより、食べ物を口の奥へ送る力が少し弱くなって来ているように思います。舌も身体のほかの筋肉と同じで少しずつ弱っていくので、食事の前に少し動かすだけでも口の中に食べ物が残りにくくなることがありますよ」
などの声かけをすると良いでしょう。

「訓練」ではなく、「準備体操」という言葉を使うのもポイントです。訓練というと「やらなければならない介護ケア」という印象を与えてしまいかねません。
準備体操のポイントとしては
・短時間でOK
・回数は少なくて良い
・継続が大切
と伝えましょう。

国試と現場をつなぐ視点

この問題は、「食べ物が残る=量を減らす」という発想から口腔機能をどう支えるかへの視点を切り替えられるかを問うています。
むせていないという情報は、誤嚥防止よりも「食べる力そのもの」に目を向ける必要があることを示しています。
食事介助とは、安全に食べさせることではなく、その人が食べ続けられる力を支えることです。
この視点があれば、国試でも現場でも、本質的な支援を選択できるようになります。

まとめ

・口腔内残留は誤嚥だけではなく舌の動きや食べ物を送り込む力の低下が関係している
・どの嚥下期に問題があるかを見極める必要がある
・舌の運動は食べる力を引き出すだけでなくこれまで通り食事を楽しむための支援につながる

Share
  • Facebook
ページトップ