【看護師国家試験 第107回 午後63】COPD問題で「労作時に息が苦しい → 酸素流量を増やす」を選んでしまう理由

国家試験対策
2026.03.29
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慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉の問題で、
「労作時に息が苦しい → 酸素が足りない → 酸素流量を増やす」
と考えを選んでしまった経験はありませんか。
実際、この第107回午後63問は、典型的な“ひっかけ問題”です。
しかし問われているのは、酸素投与そのものではなく、COPD患者の息苦しさの“原因”をどう捉えるかという視点。なぜ「 酸素流量を増やす」を選びたくなるのか、そしてなぜ不正解なのかを、病態から整理していきましょう。

問題
Aさん(75歳、男性)。1人暮らし。
慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉のため、2年前から在宅酸素療法を開始し、週2回の訪問看護を利用している。
訪問看護師はAさんから
「最近、洗濯物を干すときに息が苦しくて疲れるが、自分でできることは続けたい」
と相談された。

Aさんの労作時の息苦しさを緩和する方法として、適切なのはどれか。

1.労作時は酸素流量を増やす
2.呼吸は呼気より吸気を長くする
3.動作に合わせて短速呼吸をする
4.腕を上げるときは息を吐きながら行う

👉 正解:④ 腕を上げるときは息を吐きながら行う

解説

なぜ①を選びたくなる?COPDの労作時息苦しさを整理しよう
Aさんは在宅酸素療法を利用しながらも、
「息が苦しいけれど、自分でできることは続けたい」
と話しています。

この言葉が示しているのは、
息苦しさをゼロにしたいのではなく、生活を続けるための工夫を知りたいという思いです。
この視点をどう捉えるかが、この問題の分かれ目になります。

なぜ①「労作時は酸素流量を増やす」を選びたくなるのか

①は一見、正しそうに見えます。
「息が苦しい=酸素が足りない」と考えると、酸素流量を増やす判断は自然だからです。

しかし、COPDの労作時息切れは、単純な低酸素だけが原因ではありません。
COPDでは呼気が十分にできず、肺の中に空気がたまりやすくなります。
その結果、呼吸が浅く速くなり、胸郭の動きが制限され、息苦しさが強くなります。

この状態で安易に酸素流量を上げても、
・息苦しさは改善しにくい
・CO₂貯留を助長する可能性がある
というリスクがあります。
この「病態の整理」ができていないと、①を選びやすくなります。

他の選択肢が不適切な理由

② 呼吸は呼気より吸気を長くする
COPDでは、吸うことよりも「吐くこと」が重要です。
吸気を長くすると肺内に空気がさらにたまり、息苦しさは悪化します。

③ 動作に合わせて短速呼吸をする
短く速い呼吸は、呼気が不十分になり、呼吸仕事量を増やします。
結果として、疲労や息切れを強めてしまいます。

正解④が示している本当のポイント

④「腕を上げるときは息を吐きながら行う」は、
動作に呼吸を合わせるという指導です。
腕を上げる動作は胸郭が固定されやすく、呼吸が浅くなりがちです。
そこで、動作に合わせて息を吐くことで、呼気を保ち、呼吸のリズムを整えます。

これは、COPDで重要な
・口すぼめ呼吸
・呼気を意識した呼吸
と同じ考え方につながります。

酸素を増やすのではなく、
「今の呼吸の仕方をどう支えるか」
という視点が④の本質です。

現場でどう声をかける?

洗濯物を干す場面では、
「腕を上げるときに、ふーっと息を吐きながらやってみましょう」
「上げる前に吸うより、動かしながら吐く方が楽ですよ」
と声をかけます。

さらに、
「一回で全部やらなくて大丈夫です」
「途中で休みながら、息が整ってから次にいきましょう」
と伝えることで、
“できないように制限する指導”ではなく、
“続けたい気持ちを支える指導”になります。

国試と現場をつなぐ視点

この問題は、
「O₂を上げる=楽になる」という生理的視点から、COPDの病態の特徴(呼吸を吐き切れないことでの弊害)を念頭に、呼吸の質と生活動作をどう支えるかへ視点を切り替えられるかを問うています。
SpO₂が正常値でも息苦しさが出る理由は、
「酸素の量」ではなく「呼吸の仕方」にあります。
この考え方は、
👉 SpO₂が100%でも苦しい理由
を扱った投稿とあわせて読むと、理解がさらに深まります。ぜひ一緒に確認してみましょう。

まとめ

・COPDの労作時息切れは、酸素不足だけでなく呼気困難が大きく関係する
・酸素流量を増やす前に、呼吸の仕方と動作の工夫を考えることが大切
・動作に合わせて「吐きながら動く」指導が、生活を続ける支援につながる

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