在宅看護実習で担当したがんターミナルの患者さんとその家族。在宅看護では、患者さんだけではなく、介護をしている家族支援も重要です。看護学生の私は介護疲れの家族へどのような言葉がけをすれば良いかわからず悩みました。在宅の現場に身を置き、多数のターミナル事例に関わってきた今ならわかる気がします。今日は在宅看護における家族の疲れた心への寄り添い方をお話ししたいと思います。
患者背景と実習場面

学生のころ、私は在宅看護の実習で、がんターミナルの患者さんを担当しました。妻と2人暮らしでキーパーソンは妻でした。担当した患者さんは50代後半で、胃がんを発症し、余命半年と宣告されていました。徐々にADLが低下し、自分でできることが少なくなり、妻の介助が欠かせない状況に。年齢的にも若いということもあり、子育てもようやくひと段落しこれから第二の人生というときのがん宣告であり、本人だけでなく妻も精神的な負担が大きいようでした。日々の負担は大きく、疲労も大きかったと思いますが、妻は疲れた表情をあまり表に出す人ではありませんでした。
振り返り-今ならどうするか

看護学生として何か看護介入をしなくてはと思い、妻に「介護でどのようなことが大変ですか?」「眠れていますか?」など声かけをしていました。そして不足しているサービスなどがあれば導入を検討しなければならないと考えていました。妻はもちろん気持ちを吐露することはなく「大丈夫です」と答えるのみ。妻の表情をよく観察すると、肩の力が抜けない緊張や、疲れからくる焦燥感が伝わってきました。学生の私はどうすれば良いのかわかりませんでした。今から思うと妻は自分の思いを表に出さず強い孤独に耐えていたのだと思います。
今振り返ると私が妻へしていた質問はただの介護の評価だったのかもしれません。そんな声かけではなく「毎日よく頑張っておられますね」「奥様がそばにおられるとご本人も心強いと思いますよ」など労いの言葉が必要だったと感じます。学生の私が「質問」しかできなかったので、妻は本心を打ち明ける気になれなかったのでしょう。サービスや制度の話をして環境を整えることも大切ですが、私がやるべきことは妻の気持ちを受け止める傾聴だったのだと思います。具体的には、介護の合間に一緒に椅子に座り「今日は大変でしたね」「こういう時はどう感じますか」と共感を示すこと。言葉だけでなく、うなずきや視線、静かに話を聴く姿勢が、家族の緊張を少しずつほぐしました。また、介助の方法だけでなく、家族が休める時間や工夫できる生活リズムについて一緒に考えることも大切でした。
学びとまとめ

この経験から学んだのは、在宅看護では患者だけでなく、介護を担う家族もケアの対象であるということです。疲れや不安を言葉にできない家族の思いに寄り添い、安心感や支えを届けることが、結果的に患者の生活の質を支えることにつながります。介助の技術や知識だけでなく、共感と傾聴を通した関係づくりが、在宅看護における重要な看護力だと実感しました。



