看護実習で「教科書通りにやったのに、なぜかうまくいかない」と感じたことはありませんか?
私もその一人でした。特に印象に残っているのが、COPD患者さんとの関わりでの苦い経験です。
今振り返ると、当時は患者さんの気持ちに寄り添う視点が圧倒的に足りなかった―。成人看護や在宅看護で学んだ今だからこそ気づけたことを、ここでまとめてみたいと思います。
患者背景と実習場面

学生のころ、私はつぎのようなCOPDの増悪で入院してきた60代の大工の男性を受け持ちました。
・長年の喫煙歴
・今回の入院でHOT(在宅酸素療法)の導入が必要
・大工としての誇りと、タバコと共に歩んできた生活
私は教科書で学んだことを活かそうと「禁煙をして、HOTを導入して生活していく必要があります」と伝えました。ところが、患者さんは怒りをあらわにし、実習拒否へ…。当時の私は看護計画=“形に残る成果”を出すことにこだわりすぎていたのかもしれません。
振り返り ― 今ならどうするか

今振り返ると、その患者さんは「フィンクの危機モデル」でいう“衝撃の段階”にあったはずです。病気を受け入れる準備もないまま「指導」されたら、心を閉ざして当然でした。
もし今の私なら、まずは患者さんの言葉を聴くことに徹します。
「何が一番不安なのか」
「仕事や家族のことはどうか」
「生活の中で心配なことは何か」
傾聴とコミュニケーションを通じて、気持ちを整理できる場をつくることを大切にします。
学びとまとめ

この経験から学んだのは、成人看護や老年看護、在宅看護の場面では「その人の生活背景や価値観を理解すること」が看護の出発点だということです。
看護は「正しい知識を伝える」だけではありません。患者さんの人生や思いに寄り添い、安心して気持ちを表せるよう支えること。それが傾聴とコミュニケーションの力であり、看護の本質だと実感しました。



