NICU看護師が押さえておきたい!ネーザルハイフローの観察ポイントと看護ケア

病院
2025.07.23
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​​新生児医療では、呼吸のサポートが必要な赤ちゃんも多く、呼吸管理はNICU看護の基本のひとつです。

中でも、より低侵襲な呼吸管理法の一つとして広く使用されているのがネーザルハイフロー(NHF:Nasal High Flow)です。

NHFは、温かく湿った空気を鼻から送り込み、「自然に呼吸しやすい環境」をつくることで、赤ちゃんの呼吸負担を軽減します。
ただし、一見やさしそうに見えるこの方法にも、リスクや注意点があります。
本記事では、現場で役立つ知識として、NHFの基本的な目的や使われ方、観察やケアのポイント、リスクと対策?までを、わかりやすく整理してご紹介します。

​​1. ネーザルハイフローとは?

ネーザルハイフロー(NHF)は、赤ちゃんの鼻に小さなカニューレを装着し、加温・加湿された高流量の酸素混合ガスを送り込むことで呼吸をやさしくサポートする、非侵襲的な呼吸補助法です。

とくに在胎週数28週以上の安定した赤ちゃんでは、抜管後の呼吸サポートとして、これまで主流だったCPAPに代わってNHFが選ばれる場面が増えています。

NHFには、次のような特徴があります。

  • 鼻腔の外傷リスクが少ない
  • 装着したままで、経口哺乳が可能
  • 顔に装着する機器が少なく、​​赤ちゃんの表情がよく見える

赤ちゃん自身にとって負担が少ないだけでなく、ご家族が安心して関わりやすいという点でも、大きなメリットがあります。

【ネーザルハイフローの主な効果】

1. ​​二酸化炭素を効率よく排出し、換気を助ける

高流量のガスを鼻に送り込むことで、鼻咽頭や上気道にたまった呼気中の二酸化炭素を押し出し、再び吸い込むのを防ぎます。
その結果、ガス交換が効率よく行われるようになり、換気効率が向上します。

2. 肺胞をやさしく広げて、酸素を取り込みやすくする

高流量のガスが持続的に送られることで、呼気の終わりに軽い陽圧(2〜6cmH₂O程度)がかかります。
これにより肺胞がつぶれにくくなり、酸素を取り込みやすい状態が保たれます。

3. 加温・加湿で気道を守り、呼吸の負担を減らす

温かく湿ったガスを吸入することで気道の乾燥を防ぎ、粘液と線毛の動きを保ちやすくします。
また、吸うときの抵抗が軽くなり、赤ちゃんの呼吸の負担が減ります。

​​2. ネーザルハイフローの主な適応

NICUでは、以下のような病態やタイミングでNHFが選ばれることが多くなっています。

・呼吸窮迫症候群(RDS)/一過性多呼吸(TTN)/胎便吸引症候群(MAS)

これらの呼吸障害では、NHFの効果が報告されており、とくにRDSでは在胎28週以上の赤ちゃんに対して有効性が確認されています。
MASについては、軽症であればNHFを使用できますが、重症の場合は人工呼吸器管理が優先されます。

・気管軟化症・末梢気道狭窄などの気道が虚脱しやすい病態

呼気終末にかかる弱い陽圧(PEEP様効果)によって、気道の虚脱を防ぎ、呼吸を助けることが期待されます。

・動脈管開存症(PDA)

PDAそのものはNHFの適応とは言えませんが、肺うっ血により呼吸状態が不安定なときには、対症的に呼吸を支える目的で使用されることもあります。

・無呼吸発作

中心性の無呼吸に対しては、カフェインなどの薬物療法が基本であり、NHFは第一選択にはなりません。使用するかどうかは、原因や重症度に応じて判断されます。

・抜管後の呼吸サポート

抜管後の呼吸を安定させる目的で、CPAPに代わってNHFが選ばれる場面が増えています。
近年の研究では、在胎28週以上の赤ちゃんにおいては、CPAPと比べて挿管率に大きな差がないとされており、選択肢のひとつとして定着しつつあります。

ネーザルハイフローは、呼吸障害を呈する幅広い新生児疾患に対して使用されますが、酸素濃度(FiO₂)が高くなっている場合や、努力呼吸が見られる場合には、CPAPや人工呼吸器への移行を早期に検討する必要があります。

​​3. NHF管理の観察のポイントと看護ケア

NHFを使用している赤ちゃんは、呼吸機能が未熟な状態にあります。だからこそ、小さな変化にも気づける観察がとても大切です。

・呼吸状態

呼吸音、呼吸数、SpO₂、AIr入り、努力呼吸の有無、無呼吸の有無などを確認します。

・血液ガスデータ

PaCO₂やpHなどを確認し、換気状態を客観的に評価します。

・NHF管理

酸素流量、酸素濃度、設定温度が指示通りであるか、カニューレが鼻から外れていないかを確認します。

・鼻や周囲の皮膚状態

皮膚トラブルが生じていないか確認します。児に鼻にあったサイズのカニューレを選ぶことが、皮膚トラブル予防につながります。

・体温

新生児は体温調節機能が未熟なため、NHF使用時に「体温が上昇しやすい」「低体温になりやすい」の両方のリスクがあります。特に、開始直後、終了直後は体温変動しやすいため、こまめなモニタリングと調整が必要です。

・お腹の張り

空気を飲み込みやすいため、腹部膨満に注意が必要です。必要に応じて胃管での脱気や、排ガス・浣腸などのケアを行います。

・哺乳

哺乳中は、呼吸パターンの変化により、NHFの効果が一時的に低下することがあります。顔色や努力呼吸、モニター値を丁寧に確認し、必要に応じて哺乳の中断も検討します。また、空気嚥下による腹部膨満を防ぐため、哺乳中や哺乳後のこまめな排気も大切です。

【まとめ】

  • ・NHFは、軽度から中等度の呼吸障害がある赤ちゃんに使われる、やさしい呼吸補助の方法です。
  • ・呼吸を助ける仕組みとして、換気効率の改善や肺胞の保護、気道の乾燥を防ぐなどの効果があります。
  • ・観察では、呼吸の様子・皮膚の状態・体温・お腹の張り・哺乳中の変化などに気を配ることが大切です。

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