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血液内科
2024.02.26
化学療法時の観察のポイント 血管外漏出(EV)編

悪性リンパ腫の2回目の化学療法中の患者。既往に糖尿病があります。
本日は3日目の治療で、トレアキシンを含む抗がん剤の投与が予定されています。  前投薬の点滴を初めて数分後患者さんから、「点滴のところが今も少しピリつくね。でも昨日同じことはあったし大丈夫だよ。」とお話されました。さてあなたはどのようにアセスメントし、どう対応しますか?

患者さんは点滴開始時から点滴刺入部に違和感を伝えています。昨日投与されたトレアキシンには投与中の血管痛があります。しかし血管痛は投与が終われば消失します。翌日にも点滴時に痛みが出現している状況は血管外漏出(以後EV)の可能性が高いと考えられます。

化学療法中、EVを引き起こすと、「やけど」のような激しい痛みや難治性の潰瘍が発生することもあります。 EVの兆候を観察し防ぐことが大切ですが、漏出時に投与していた抗がん剤の種類から発見時の状況によっては処置や対応は大きく変わることを念頭に対応していくことが必要です。

1.EV対応ポイント

①点滴部位の観察
患者の皮膚状態や点滴部位の腫れ、赤みを慎重に確認しましょう。刺入部に痛みや異常感覚があるかどうかの確認が必要です。抗がん剤の前投薬の点滴の段階で上記の症状や点滴ラインからの逆血等を見るのもよいでしょう。

② 患者の既往歴の考慮
がん患者や糖尿病患者は、化学療法を繰り返すことにより血管が脆弱になることがあります。患者の既往歴や現在の状態からEVのリスクをアセスメントしましょう。

③EVの説明

化学療法を受けている患者さんにはEVについて知らない方もおり点滴差し替えを渋る方もいます。  
しかし一度EVになってしまうと、軽い発赤・腫れ・痛みの皮膚症状が出現し、数時間~数日後にその症状が増悪、水疱→潰瘍→壊死形成へと移行していきます。重症化すると瘢痕が残ったり、漏出部位によっては外科的処置(漏出部位のデブリードマンや植皮術)が必要になることもあります。
このことを患者さんが理解できるよう説明していくことが大切です。

2.もしEVがおきてしまったら

化学療法時に異常を発見した場合は、点滴のクレンメを止め速やかに医師に連絡、適切な処置を検討しましょう。 薬剤の種類や漏れた量によっては状況によっては、留置針を抜かず薬液や血液を吸引しながら抜去後局所にステロイ剤を皮下注射する場合もあれば温熱圧迫をすることもあります。速やかに医師に連絡し、適切な処置ができるようEV時の対応マニュアルや処置物品も含め準備していくことが重要です。

【まとめ】

・皮膚や点滴部位の慎重な観察がEV予防の基本。がん患者や糖尿病患者は脆弱な血管に注意
・EV症状は軽い発赤から激しい痛みや潰瘍になることも。患者へ丁寧に説明することが不可欠。
・EV発生時は速やかに医師に報告し、適切な処置を検討。外科的処置(手術)が必要な場合もある。事前の準備が肝要。

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