気管切開をしている患者さんといえば、まず吸引が思い浮かぶかもしれません。しかし、それだけではなく、気管切開をしている患者さんが苦手なことがあります。皆さんはすぐに思い浮かびますか?それらを理解できると、これから気管切開を受ける患者さんへの十分な説明や支援へと繋がります。今回は気管切開患者さんが苦手なことを紹介します。
気管切開とは

主に上気道の狭窄・閉塞、人工呼吸器管理が必要な場合、気道分泌物の除去が必要な場合に行われる、外科的手術。
苦手なこと①声を出すこと。

発声は肺から送り出された空気が、声門をすり抜けるようにして口の方へ流れ出て、声帯が振動して声となります。しかし気管切開患者さんでは、呼気が声門を通過しないため、声が出なくなります。これは気管切開患者さんにとって、最大のデメリットであることが多いです。
苦手なこと②力むこと。いきむこと。
口や鼻で呼吸をする際は、自分の意志で口と鼻からの呼吸をコントロールし、息を止めることが出来ます。しかし、気管切開患者さんでは、息を止めることが出来ません。これにより、重いものを持ち運ぶことが難しくなります。また、いきむことが難しいことから便秘傾向になりがちです。排便状況をしっかり把握しましょう。
苦手なこと③麺類を食べること。
気管切開患者さんでは、ラーメンやうどん、そばといった麺類をすすって食べることが難しくなります。通常麺類をすする時は、吸気が口腔内を通過しています。しかし、気管切開患者さんではこの過程がないためです。
苦手なこと④においを嗅ぐこと。

人がにおいを認識するには、鼻腔を吸気が通過する必要があります。しかし、気管切開患者さんでは吸気が鼻腔を通過しないため、においを嗅ぐことが難しくなります。このため、経口摂取が可能な場合でもにおいがわからず、食事摂取量へ影響や食品の腐敗に気づかず食べてしまうということもあり注意が必要です。また、においの強いものやサーキュレーターが回っている環境においては、鼻腔まで空気が届きにおいがわかることもあります。
苦手なこと⑤お風呂やプールに入ること
気管切開孔から大量の水が入ってしまうと、溺れるのと同じ状態になります。だからといってシャワー時に気管切開孔を透明フィルムなどで覆うと窒息してしまうため、注意が必要です。
【まとめ】
気管切開患者さんの苦手なことは次の5つです。
1、声を出すこと
2、力むこと。いきむこと。
3、麺類を食べること。
4、においを嗅ぐこと。
5、お風呂やプールに入ること。