認知症患者のBPSDは予想がつきにくくどのように対応したらいいのか、一人ひとり対応が違い、マニュアル通りにいかないことも多く、対応が難しいと感じるのではないでしょうか。しかし認知症の対応には正解はありません。できる範囲で患者の気持ちや思いに寄り添える看護を目指したいものです。今回はうまくいった!と思えた事例をいくつか紹介します。
1.ご飯を見つめて食べない

配膳してもなかなか食事をしない認知症の患者さんがいました。おかずは手をつけても米飯は手付かずということも。白いお茶碗に盛られた米飯はお茶碗と色が同化し見えにくい場合があるようです。色のついたお茶碗に入れたり、米飯の上に海苔や梅干しなど色のついたものを置くことで認識しやすくなりました。
2.何度もナースコール

認知症の患者さんで度々ナースコールを鳴らす方がいました。トイレ介助した1.2分後にナースコールを鳴らし「トイレお願いします」と言われることも。
尿意がはっきりしなかったり、トイレしたこと自体を忘れてしまっていたり理由はさまざまですが、「もう終わりましたよ」「何度もコールしてはいけません」などの言葉は絶対避けなければなりません。ナースコールを鳴らすことに何か意味があるかもしれないからです。入院の寂しさや不安から尿意が頻回になっていることもあるでしょう。時間をとって気持ちを聞いてあげることで気持ちが落ちつきナースコール回数が減ったこともありました。
3.日付や時間がわからず混乱する

朝なのにもう夕方だからと言って寝る準備を始めたり、「今は年の瀬だから色々用事があり家に帰らなければ」など日時がわからず混乱する方がおられました。1日の時間の動きがわかるように時計を置いたり、日付がわかるようカレンダーをおいて、その都度声掛けをすることで混乱が解消されたケースもありました。
4.点滴やドレーンを触ったり抜いてしまう

触ってはいけないと言っても何度も点滴やドレーンを抜いてしまう方がいました。短期記憶が欠落している場合、説明を何度してもすぐに忘れてしまうため一度説明しても静止するのは難しいでしょう。「ダメ」や「何度言ったらわかるの?」などの言葉は絶対にしてはいけません。短期記憶が欠落していようとその時に受けた言葉に対してショックや怒りを覚えることはあります。恐怖心や不安感を増幅させる危険性もあります。
触ったり抜いてしまう原因について考えましょう。痛みや痒みなどの不快感で抜いてしまう場合があります。刺入の違和感は仕方ないかもしれませんが、点滴の接続部の凹凸が皮膚に当たって痛みの原因となっている場合や皮膚乾燥から痒みが出現している可能性も。点滴やドレーンを抜いてしまう困った患者とみるのではなく、その背景に隠れている原因究明をすることで点滴やドレーン抜去がなくなるケースもありました。
【まとめ】
1.白い茶碗の米飯は認知症の人には見えないことも。梅干しや海苔などのおかずを添えて見える工夫を。
2.ナースコールを度々鳴らす理由は必ずあります。ときにはじっくり話を聞くことも必要です。
3.日付や時間がわからず混乱している人には時計やカレンダーを置いてみるのもひとつです。
4.点滴やドレーンチューブを触ったり抜いたりするのには原因があります。原因を考えることで予防策を考えられるかもしれません。