ネーザルハイフローとは「高流量鼻カニュラ酸素療法(high-flow nasal cannula oxygen:HFNC)」のことで、呼吸状態が不安定な患者さんに用いられる酸素療法の一つです。
ハイフローセラピーとも呼ばれ、鼻カニュラを使用して加温・加湿した高流量の酸素を投与することで、呼吸状態の改善を図ります。
この記事では、ネーザルハイフローの基本的な適応と、禁忌について紹介します。
ネーザルハイフローが適応される疾患・病態

鼻カニュラによる酸素療法では、流量6L/分程度までの酸素投与が限界とされてきました。
また、一定のFiO2を維持するためには、リザーバー付きマスクや、人工呼吸器を使用する必要がありました。
ネーザルハイフローでは、最大60L/分という高流量の酸素を経鼻投与し、FiO290%以上を維持することが可能です。
患者自身が換気を維持できる状態にあり、鼻カニュラや酸素マスクで低酸素血症が改善しない場合や、FiO240%以上を必要とする場合には、ネーザルハイフローの使用が検討されます。

ネーザルハイフローが適応となるのは、主に以下の疾患や病態です。
・慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)、COPDの急性増悪
・肺炎
・肺水腫
・肺線維症
・気管支喘息
・肺挫傷や胸部外傷などの急性肺損傷
・急性呼吸窮迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome:ARDS)
・急性心不全
・気管内挿管の抜管後や、非侵襲的陽圧換気(non invasive positive pressure ventilation:NPPV)後の呼吸管理
・低酸素血症患者の気管支鏡、消化器内視鏡、経食道エコーなどの検査時
・終末期の低酸素血症(緩和を目的としたもの)
・挿管を希望しない患者
ネーザルハイフローの禁忌

ネーザルハイフローは、換気の補助ができないため、人工呼吸器の代用にはなりません。
PaCo2が48Torrを超えるような、II型呼吸不全の患者は、原則として非適応となります。
また、顔面に外傷があり鼻カニュラが使用できない患者、気胸の患者や気胸が疑われる患者なども、ネーザルハイフローは原則適応されません。
患者さんが安全に酸素療法を受けられるよう、ネーザルハイフローの適応や禁忌について、正しく理解しておきましょう。
【まとめ】
- ・ネーザルハイフローの主な適応
- COPDやCOPDの急性増悪、肺炎、急性肺損傷、急性心不全、気管内挿管後やNPPV後の呼吸管理など
- ・ネーザルハイフローの主な禁忌
- II型呼吸不全、顔面外傷、気胸など