【看護師国家試験第114回 術後患者の離床の判断指標】術後離床について考えよう

国家試験対策
2025.12.20
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2025年第114回看護師国家試験で提示された「心臓血管外科手術後患者の離床の判断指標」に関する問題は正答率はわずか16.2%と、全国の受験生が苦戦した問題のひとつです。臨床経験の少ない看護学生さんにとって術後の患者の状態を具体的にイメージするのは難しいもの。特に術後離床の判断指標に関する知識は、教科書だけでは理解しづらく、実際の現場をイメージする力が求められます。今回はその難問をやさしく解説し、理解を深めるヒントをお届けします。

【第114回 看護師国家試験 午後問題95】
次の文を読み問題2に答えよ。
Aさん(55歳、男性、会社員)。激しい胸痛で救急搬送され、心筋梗塞と診断された。冠動脈バイパス術〈CABG〉を受け、ICUに入室した。

手術中の輸液量2,700mL、輸血量400mL、出血量280mL、尿量200mLであった。手術から6時間が経過し、人工呼吸器が装着され、心囊ドレーンと、胸腔ドレーンが留置中である。

身体所見:体温37.1℃、脈拍63/分、血圧126/62mmHg、末梢冷感はなし。肺野全体に湿性ラ音を聴取、漿液性の気道分泌物を認める。

検査所見:吸入酸素濃度40%、動脈血酸素分圧〈PaO2〉95 Torr、動脈血炭酸ガス分圧〈PaCO2〉36 Torr、中心静脈圧12cmH2O、心エコー検査では左室駆出率〈LVEF〉45%、心囊液の貯留なし。胸部エックス線写真では両肺野の広範に透過性の低下を認める。

問題2
術後2日、Aさんは人工呼吸管理を離脱し、離床が検討されたが中止となった。
看護師がAさんの離床中止を判断した指標はどれか。2つ選べ。

1.ドレーンが留置中である
2.安静時の呼吸数が20回/分である
3.安静時の心拍数が100回/分である
4.新たな不整脈(心房細動)が発生している
5.時間尿量0.5ml/Kg/時が3時間持続している

正答は4と5でした。それぞれの解答について説明していきます。

1.✕ ドレーン留置中である

ドレーンの留置は離床中止の直接的な判断指標にはなりません。むしろ適切な管理のもとで離床することは、胃腸の蠕動運動や血液循環の促進、呼吸器合併症・褥瘡・血栓症(エコノミークラス症候群)・筋力低下の予防となります。重要なことは、ドレーンからの排液量や性状を観察し、変化を見逃さないことです。

2.✕ 安静時の呼吸数が20回/分である

成人の安静時呼吸の正常値は12〜20回/分です。正常範囲内のため、離床中止の直接的な判断指標にはなりません。

3.✕ 安静時の心拍数が100回/分である

心拍数100回/分は正常範囲内のため、離床中止の直接的な判断指標にはなりません。日本循環器学会 / 日本心臓リハビリテーション学会合同ガイドライン 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインでは、安静時の脈拍が120回/分以下を心臓手術後の離床開始基準としています。

4.〇 新たな不整脈(心房細動)が発生している

術後に新たに不整脈が出現した場合は、心臓への負荷や異常を示すサイン。心房細動は心臓のポンプ機能に影響を与え、心拍出量を不安定にします。さらに、血栓形成のリスクを高め、離床により状態が悪化する可能性があります。

5.〇 時間尿量0.5ml/kg/時が3時間持続している

尿量0.5ml/kg/時以下の状態が3時間以上続く場合は、循環血液量の不足や心臓のポンプ機能低下など循環動態の不安定さを示しています。この状態での離床はショックや腎不全などの重篤な合併症を引き起こすリスクがあり注意が必要です。

【まとめ】

・術後の新たな不整脈は心臓への負荷や異常を示している
・尿量減少は循環血液量の不足や心臓のポンプ機能低下を表している
・離床の判断はバイタルサインだけでなく、全身状態の観察とアセスメントが重要である

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