酸素療法は患者の健康を維持するために欠かせない治療法ですが、その効果を最大限に引き出すためには、酸素流量とFiO2の基本的な理解が必要です。
今回は、酸素療法における酸素流量とFiO2の基本的な考え方と低流量システムのデバイスの違いについてご紹介します。
酸素流量とFiO2の基本
酸素流量とは
酸素流量とは、酸素供給装置から1分間に供給される酸素の量を指します。これはリットル/分(L/min)という単位で表され、酸素療法を行う際には、医師の指示に基づいて適切に調整します。酸素流量を正確に設定できているか、患者さんの装着状況はどうか必ず確認しましょう。
FiO2とは
次に、FiO2について考えてみましょう。FiO2(Fraction of Inspired Oxygen)は、吸入する酸素の割合を示します。通常、私たちが吸っている空気中の酸素濃度は21%ですが、肺疾患のある患者や手術中の患者にとっては、FiO2を適切に管理することが特に重要です。使用する酸素供給デバイスによって吸入酸素濃度は異なるため、患者の状態に応じて最適なデバイスを選び、FiO2を調整する必要があります。
高すぎるFiO2は酸素中毒のリスクを引き起こす可能性があります。一方で、FiO2が低すぎると低酸素血症のリスクが生じるため、医師の指示に従って適切な管理を行うことが求められます。酸素療法を安全かつ効果的に行うためには、これらの要素を理解し、正確に運用することが重要です。
酸素投与器具の特徴と使用可能な酸素流量とFiO2の目安
<鼻カニューレ>
特徴:
低流量の酸素投与に適しており、患者の快適性が高いですが、鼻からのみの酸素投与のため鼻腔が乾燥しやすいこともあり高濃度の酸素投与には向きません。
酸素流量とFiO2:
1L/分で酸素濃度24%、2L/分で28%、3L/分で32%、4L/分で36%。使用可能な酸素流量は1〜4L/分です。
<シンプル酸素マスク>
特徴:
鼻と口を覆う簡易な酸素マスクで、鼻カニューレよりもFiO2を高めることができますが、口を覆うため圧迫感があり不快感があります。そして、食事摂取前には鼻カニューレに変更する必要があります。
酸素流量とFiO2:
5L/分以上で使用され、酸素濃度は33〜50%。5〜6L/分で40%、6〜7L/分で50%、使用可能な酸素流量は5〜8L/分です。
<リザーバー付マスク>
特徴:
リザーバーバッグに酸素を貯め、呼気中の酸素を再吸入できるマスクで、FiO2を60%以上に維持できます。しかし、シンプル酸素マスク同様口を覆うことや加湿状態圧迫感があり不快感あります。そしてシンプル酸素マスク同様、食事摂取前には鼻カニューレに変更する必要があります。
酸素流量とFiO2:
6L/分で酸素濃度60%、7L/分で70%、8〜10L/分でさらに高い酸素濃度を達成できます。使用可能な酸素流量は6〜10L/分です。
これらのデバイス(低流量システム)では患者さんが鼻呼吸か口呼吸かなどの呼吸の仕方によって吸入できる酸素濃度(FiO2)が変動することを念頭に入れておきましょう。
【まとめ】
-FiO2は吸入酸素濃度を示し、患者の状態に応じて適切に管理が必要
-鼻カニューレや酸素マスクなど、使用する器具によりFiO2は変わる
-低流量システムでは鼻呼吸か口呼吸かなどに患者さんの呼吸様式によっても吸入できる酸素濃度(FiO2)は変動する