排便ケアは日常的な業務のひとつですが、実は体調の変化を察知する重要な観察ポイントです。
「毎日出ているから大丈夫」「いつも軟らかいから問題ない」と見過ごしてしまうと、重大な疾患のサインを見逃すことにつながりかねません。ここでは、便の「色」「性状(下痢・便秘)」「見落としやすい変化」に注目し、現場での観察とケアの工夫を紹介します。
色で見分ける危険サイン

便の色は、消化管や肝胆道系、感染症など、体の内側の状態を映し出します。
黒色便:胃や十二指腸からの出血が疑われる重要サイン。タールのような光沢と強い臭いが特徴で、見つけたらすぐにバイタルサインの確認と報告が必要です。
赤色便:肛門周囲の出血の場合もありますが、大腸出血の可能性もあるため、便のどこに血がついているか(表面か内部か)を観察します。
灰白色便:胆汁の分泌が滞っている可能性があり、肝胆道系疾患のサインです。黄疸や尿の色の変化と合わせて見逃さないことが大切です。
緑色や黄色の便:食事や薬剤の影響も考えられますが、持続する場合は医師への報告が必要です。特に黄色く脂っぽい便は、すい臓や小腸での吸収障害の可能性があります。
下痢と便秘の性状レベルを見極める

下痢:
下痢は回数だけでなく、性状や症状の有無が重要です。
軽度の下痢(1〜2回/日)であれば、食事や一時的な冷えによるものもありますが、3回以上かつ腹痛・発熱を伴う場合は感染性腸炎などを疑い、感染対策と迅速な報告が必要です。
便秘:
便秘も軽視できません。
3日以上排便がなく、腹痛や吐き気を伴う場合は、イレウスや直腸内の嵌塞便(かんそくべん:高齢者や寝たきりの人、便秘が続いている人に多くみられる)の可能性があります。
特に「出てはいるが少量ずつ」「軟便が続いているがスッキリしない」という訴えには、排便残渣や便塞栓が隠れているケースもあるため注意が必要です。
見落としやすい便の危険サインと観察のポイント

便のにおいや見た目が少し違うだけでも、体内で異変が起きているサインであることがあります。
いつもよりにおいが強かったり、酸っぱいようなにおいがしたり、粘液が混ざっている便は、感染症や薬剤による腸炎などの初期症状の可能性があります。
高齢者や免疫力が低下している患者では、便の変化しか症状として現れないこともあるため、日々の便の観察が大切です。
抗生剤(例:セフェム系、クリンダマイシン、アモキシシリンなど)や、消炎鎮痛薬(例:ロキソプロフェン、イブプロフェン)、抗がん剤、免疫抑制剤などは、腸内環境に影響を与え、薬剤性腸炎の原因になることがあります。
便は、量や回数だけでなく、色・形・におい・粘液の有無などを具体的に記録し、チームで共有することが安全なケアにつながります。
【まとめ】
・便の色は、黒・赤・灰白・緑・黄色などがあり、出血や肝胆道系の異常、吸収障害などのサインとなるため注意が必要です。
・下痢が続き、腹痛や発熱を伴う場合は感染性腸炎が疑われるため、早めに報告し、感染対策を徹底します。
・便秘が3日以上続き、腹痛や吐き気がある場合は、嵌塞便や腸閉塞のリスクがあるため、医師に相談します。
・便の強いにおいや酸っぱい臭い、粘液が混ざる場合は、感染症や薬の影響による腸炎の可能性があり注意が必要です。
・抗生剤(セフェム系・クリンダマイシンなど)や鎮痛薬(ロキソプロフェンなど)、抗がん剤は腸内環境に影響を与えるため、便の変化に気づくことが大切です。
・便の量や回数だけでなく、色・形・におい・粘液の有無を具体的に記録し、チームで情報共有することが安全なケアにつながります。