第114回看護師国家試験の午前84問で出題された「がん治療」に関する問題は、正答率が12.4%と多くの学生が苦戦した問題です。がん治療は日々進歩しており、がん患者さんは年々増加傾向にあるため、治療方法についての知識は重要です。今回は、同種造血幹細胞移植に関する問題について解説します。
【第114回 看護師国家試験 午前問題84】

同種造血幹細胞移植の前に行われる全身放射線照射の目的はどれか。2つ選べ。
1.感染の予防
2.拒絶反応の防止
3.抗癌薬の活性化
4.腫瘍細胞の根絶
5.移植片対宿主病〈GVHD〉の予防
同種造血幹細胞移植(骨髄移植)は、人(ドナー)の造血幹細胞を人(患者)に移植する治療です。主な適応疾患は、白血病や多発性骨髄腫、悪性リンパ腫などで、移植前処置が必要です。移植前処置のひとつである全身放射線照射は、自己免疫を適切に抑制し、腫瘍細胞をできるだけ減少させ、自身の造血機能を弱くして移植した細胞の生着を促します。
では各選択肢を解説します
1.感染予防 ×誤り

全身放射線照射の目的の1つは免疫を抑えることです。そのため、白血球の減少や免疫低下が起こり、感染のリスクは上がります。すなわち、感染予防にはなりません。
2.拒絶反応の防止 〇正解
同種造血幹細胞移植では、患者の免疫細胞が「他人の細胞だ」と認識すると、移植された造血細胞を攻撃し拒絶してしまいます。そのため、放射線や抗がん剤を使って患者の免疫細胞を抑え、移植細胞の生着を助けます。
3.抗癌薬の活性化 ×誤り
全身放射線照射の1つの目的として、腫瘍細胞を直接破壊することがあります。抗癌薬を活性化する作用はありません。
4.腫瘍細胞の根絶 〇正解

白血病などの血液がんでは、腫瘍細胞(がん細胞)が骨髄や血液の中に存在しています。移植前にこれらをできるだけ減らしておかないと、移植後に病気が再発するリスクが高まります。全身放射線照射は、体全体に照射することで骨髄内の腫瘍細胞を攻撃し、できるだけ少なくする目的で行われます。
5.移植片対宿主病(GVHD)の予防 ×誤り
「誰が誰を攻撃しているのか」を意識すると、移植片対宿主病(GVHD)は理解しやすくなります。GVHDは移植されたドナーの免疫細胞が、患者さんの身体を異物と認識して攻撃してしまう反応です。全身放射線照射は「患者さん」の免疫を抑制することが目的のひとつなので、GVHDの予防にはなりません。GVHDを予防するためには、免疫抑制薬の使用が必要です。
まとめ
造血幹細胞移植前の放射線・抗癌薬の目的は
① 腫瘍細胞を減らす
② 免疫を抑えて拒絶を防ぐ
この2つをしっかり理解しておきましょう。
移植前は「免疫を下げて、腫瘍細胞を減らす」これが重要です。



