腸ろうは、胃を介さず腸へ直接栄養を届ける経腸栄養法です。胃ろうとは仕組みもケアの注意点も大きく異なり、増設の背景には胃切除後や胃の通過障害、誤嚥リスクの高さなどがあります。初めて担当すると、注入速度の調整、腹部症状の変化、半固形栄養の扱いなど不安になりがちです。本記事では、腸ろうの特徴と安全な注入のための観察項目、トラブル時の対応ポイントを整理します。
① 腸ろうとは何か:胃ろうとの違い

腸ろうは、経皮的に小腸(主に空腸)へ直接栄養を注入するための瘻孔を増設する方法です。胃ろうとは異なり、胃での貯留や消化を経ずに栄養が届くため、注入速度や栄養剤の種類に慎重な観察が必要です。胃切除後、通過障害、重度の誤嚥リスクなどが選択理由として挙げられます。腸は胃に比べて急速注入に耐えにくく、腹部症状の変化を細かく観察する必要があります。
②栄養剤の選択:液体栄養が原則

腸瘻では、原則として「液体栄養」が選択されます。胃のような貯留機能を持たない小腸へ直接注入するため、下痢や腹痛(ダンピング症候群)を防ぐ必要があるためです。したがって、栄養ポンプ等を用いて長時間かけてゆっくりと滴下する「持続投与」が一般的です。
③ 注入前の観察:安全に始める準備

注入前に確認すべき項目は次のとおりです。
・バイタルサインの変化
・腹部膨満の有無
・腸音(有無・リズム)
・カテーテルの固定状態・皮膚の発赤・漏れの有無
・前回注入時の下痢・嘔吐などの有無
腸ろうでは腹部の張りや下痢が大きなサインとなるため、前回までの経過も含めて慎重に判断します。
④ 注入中の観察

注入開始後は次の点を観察します。
・注入速度に対する耐性
・腹部膨満や違和感の変化
・痛みや不快感の訴え
・カテーテルの抵抗感
腸瘻チューブは非常に細いため、抵抗を感じた際に無理に圧をかけて押し込むことは厳禁です。カテーテルの破損や腸管壁への負荷につながる恐れがあるため、一度注入を停止し、医師や看護師に報告して指示を仰ぎましょう。
⑤ 注入後の観察:遅れて出るトラブルも重要

注入後すぐだけでなく、数時間後にも変化が出ることがあります。
・下痢・頻便・腹痛
・腹部膨満の進行
・発汗・冷感などの不定愁訴
・カテーテル挿入部からの漏れ・発赤
腸ろうでは胃ろうより下痢が起こりやすく、栄養剤の種類・温度・速度の調整を検討する必要があります。
⑥ トラブル対応と報告のポイント
トラブル発生時は状況を整理し、客観的に報告します。
報告例
「腸ろう注入中に強い抵抗感があり、注入を停止しました。腹部は軽度膨満で疼痛はありません。カテーテルの屈曲はありませんでした。閉塞を疑うため確認をお願いします。」
まとめ
・腸ろうは胃ろうと異なり、注入速度と腹部症状の変化を重点的に観察する
・抵抗や腹部症状の小さな変化を丁寧に確認する
・異変時は注入を中止し、根拠となる観察情報を添えて医師へ報告する



