CVカテーテルやCVポートと同様、カテーテルの先端が上大静脈に留置されるPICC。では「この患者さんはなぜCVカテーテルではなくPICCを選択するの?」「PICCならではのメリットって何?」など遭遇しやすい疑問を、デメリットとあわせて解説します。
メリット

①挿入時の合併症が少ない
上腕から挿入するため、解剖学的にCVカテーテル挿入時の気胸・血胸、動脈穿刺といった合併症を伴うリスクが低いです。
②CVカテーテルより感染率が低い
論文によると、CVカテーテルの主な挿入部位である鼠径部や頸部に比べて、上腕は皮膚温が低く、常在菌が少ないため感染発生率が低いと言われています。ただし、管理方法や留置期間によって感染率は変動するため、適切な衛生管理が重要です。
③挿入時やテープ交換の際、恐怖心や羞恥心が少ない
PICCは上腕から挿入されているため、頸部や鼠径部に比べて肌の露出範囲が少なく、挿入時や処置の際に恐怖心や羞恥心が軽減されます。
④入浴時の保護カバーが簡単
入浴時には、CVカテーテル刺入部をビニールやラップで濡れないように保護します。PICCは上腕に刺入部があるため、ビニール袋に腕を通しやすく、テープ固定もしやすいため、濡れるリスクが少ないです。
デメリット

①CVカテーテルに比べて静脈炎のリスクが高い
頸部や鼠径部に挿入されているCVカテーテルと比べ、上腕の血管は細く、PICCも細いため血管とカテーテルの摩擦が生じやすく静脈炎のリスクが高くなります。また、挿入時の手技や血管選択によって、静脈炎のリスクが上がることが報告されています。
②肘を曲げると滴下速度が変わる可能性がある
上腕に留置されているため、上腕の可動によって滴下速度が変わることがあります。
カテーテル先端の特徴

CVカテーテルやCVポート同様、PICCの先端構造にはグローションタイプとオープンタイプとがあります。先端によって特徴が違うので確認をしておきましょう。
・グローションカテーテル
長期間留置しても逆血が起こりにくく、生理食塩水でのロックができ、採血も可能です。
・オープンカテーテル
陽圧ロックなど決められた手順でロックしないと閉塞してしまう可能性があります。
PICCはさまざまなメーカーから販売されており、病院ごとに使用しているカテーテルが異なります。必ずどのようなカテーテルなのか、特徴を把握し、院内ルールに沿って安全に使用しましょう。
【まとめ】
・PICCのメリット①挿入時の合併症が少ない②CVカテーテルより感染率が低い③挿入時やテープ交換の際、恐怖心や羞恥心が少ない④入浴時の保護カバーが簡単
・PICCのデメリット①CVカテーテルに比べて静脈炎のリスクが高い②肘を曲げると滴下速度が変わる可能性がある共通の特徴は、グローションカテーテルは逆血が少ない、オープンカテーテルは陽圧ロックを正しく行わないと閉塞するリスクが高い。



