実習で患者さんに「痛みはどうですか?」と聞くと「ちょっと痛いかな」と答えられ、どのくらいの痛みなのか分からず、後で困ったことはありませんか?ケアにつなげるにも判断に迷う…。そんなときに役立つのが、痛みを客観的に「見える化」できるNRSやフェイススケールです。痛みは表現があいまいになりやすいからこそ、客観的に評価できるツールを知っておくことが大切です。ここからはNRSとフェイススケールの違いや使い分け、そして看護計画への活かし方を整理してみましょう。
がん患者さんを中心に、術後の痛み評価にも応用できる
緩和ケアを行う際に大切なのが「痛みの評価」です。
痛みは体のつらさだけでなく、不安や気持ちの落ち込みにもつながります。そのため、まずは「どのくらい痛いのか」をしっかり確認し、ケアにいかすことが必要です。よく使われるのが NRS と フェイススケール です。
・NRS(Numerical Rating Scale)

NRSは「0=痛みなし」から「10=考えられる中で最悪の痛み」までを数字で自己評価してもらう方法です。数値化されるため、経時的な比較や鎮痛薬の効果判定に適しています。
例として「鎮痛剤内服後2時間でNRSが7から3に低下」と記録すれば、効果が明確に示せます。術後管理や慢性痛のフォローでも広く使われていますが、数字の理解が難しい患者さんには不向きな場合もあります。
・フェイススケール

フェイススケールは、表情のイラストを段階的に提示し、患者さんに今の痛みに最も近い表情を選んでもらう方法です。言葉や数字での表現が難しい患者さんに適しており、高齢者や小児、認知機能に軽度の障害がある方にも有効です。ただし、文化や個人差により「表情の解釈」が曖昧になる場合があります。
使い分けのポイント
・数字で答えられる患者さん → NRSを継続的に活用
・数字や言語で表現が難しい場合 → フェイススケールを活用
・状況に応じて柔軟に組み合わせ、患者さんにとって答えやすい方法を選ぶことが大切です。
看護計画への活かし方
痛みの評価は「点数づけ」が目的ではなく、ケアに結びつけるための根拠になります。
・比較評価に便利:鎮痛薬の服用によりNRSで「7→3」に下がったなら、鎮痛薬の有効性を確認でき、次回投与や副作用観察の指標になります。
・非薬物療法の検討:フェイススケールで苦悶表情が続くなら、薬物以外に体位調整や温罨法、リラクセーション法も併用を検討します。
・痛みの性質の把握:部位や強さに加え「ズキズキする拍動性」「焼けるような灼熱痛」「電気が走るような放散痛」「締めつけられる圧迫感」「鈍く続く重だるさ」などを具体的に記録すると、がん性疼痛の種類(体性痛・内臓痛・神経障害性疼痛)の理解につながります。
こうした観察は、がん患者さんの痛みだけでなく、術後の急性疼痛や慢性的な腰の痛みなどの評価にも応用でき、医師や薬剤師など多職種との連携にも役立ちます。
患者さんへの声かけ例

・「今の痛みを数字にするとどのくらいですか?」(NRSを使う場合)
・「この顔の中で一番近いのはどれですか?」(フェイススケールを使う場合)
・「ズキズキしますか?それとも重だるい感じですか?」(痛みの性質を確認する場合)
具体的な声かけを工夫することで、患者さんも答えやすくなり、評価の正確さが高まりますのでぜひ活用してみてください。
【まとめ】
・NRS は数値での変化比較に便利
・フェイススケール は数字や言語が難しい患者さんに有効
・「部位・強さ・性質」を含めた記録が、疼痛の種類把握とケア選択につながる
・評価結果を根拠に、薬物・非薬物療法を組み合わせた看護計画を立てる
・患者さんが痛みを伝えやすくなることで、より的確なケアにつながる



