カスハラから自分を守る医療・介護職が身につけるべき対応スキルと心構え

観察・患者対応
2025.10.6
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​​医療・介護現場で深刻化するカスタマーハラスメント(カスハラ)。現場で働く私たちが、いざという時に自分を守るための具体的な対応方法と心構えについて解説します。

1. カスハラの現状と個人対策の重要性

医療・介護現場でのカスタマーハラスメント(カスハラ)は、患者さんやそのご家族からの暴言・暴力・過剰な要求などの迷惑行為を指します。近年の調査では、医療・福祉職のパーソル総合研究所が対人サービス職を対象に実施した2024年の調査では、全体で「過去の被害経験」は35.5%、「直近3年以内の被害経験」は20.8%と報告されています。 職種別にみると、福祉系専門職(介護士・ヘルパー等)は34.5%、医療系専門職(医師・看護師等)は28.9%でした。(参照①)

組織的な対策も重要ですが、実際に現場で対応するのは私たち一人ひとりです。適切な対応スキルを身につけ、自分自身を守る心構えを持つことが、安全で安心な職場環境の実現につながります。

2. 個人でできるカスハラ対策の基本

カスハラに遭遇した際の基本的な対応方法を身につけておきましょう。

■ 冷静に対応する

相手が感情的なときこそ、こちらは落ち着いて対応することが重要です。深呼吸をして、相手のペースに巻き込まれないよう心がけましょう。感情的になってしまうと、状況がさらに悪化する可能性があります。

■ 相手の話をよく聞く

反論せず、まずは相手の話をしっかり聞きましょう。途中でさえぎると状況が悪化する場合があります。「お話を伺います」「どのようなことでお困りですか」といった姿勢で、相手の言い分を理解することから始めます。

■ 毅然とした態度を保つ

不当な要求には、過剰に下手に出ることなく、毅然とした態度で対応しましょう。「不快な思いをさせて申し訳ございません」と答え、事象に対して繰り返し謝ることは避けます。これは「謝る」=「自分の非を認めた」と受け取られ過剰な要求がエスカレートする場合があるので注意が必要です。

■ 複数人で対応する

不安を感じたら、すぐに誰かに声をかけましょう。複数人で対応することで、安全面の確保や後の証言の面でも安心です。「上司を呼んでまいります」「担当者と一緒に対応させていただきます」といった声かけで、一人での対応を避けましょう。

■ 記録を残す

対応した内容は必ず記録に残しましょう。日時、相手の特徴、発言内容、対応した職員名など、詳細に記録することで、今後の対策や法的対応が必要になった際の証拠となります。

3. 場面別の対処法とポイント

■ 暴言を受けた場合

相手の感情が高ぶっているときは、まず安全を確保することが最優先です。「少しお時間をいただけますか」と一旦距離を置き、上司や同僚に相談しましょう。

■ 理不尽な要求を受けた場合

「検討いたします」「確認いたします」として、その場での即答は避けましょう。組織としての方針を確認し、適切な対応を検討する時間を確保することが重要です。

■ 身体的な危険を感じた場合

迷わず距離を取り、すぐに他の職員や警備員、必要に応じて警察に連絡しましょう。自分の身の安全を最優先に考えることが大切です。

4. メンタルヘルス管理と支援体制の活用

カスハラを受けた後は、心理的なダメージを一人で抱え込まないことが重要です。まずは信頼できる同僚や上司に話を聞いてもらいましょう。「たいしたことではない」と思っても、誰かに話すことで気持ちが整理されることがあります。

多くの職場には相談窓口やカウンセリング制度があります。専門的なサポートを受けることで、適切な対処法を学び、心の健康を維持することができます。個人の経験や情報を共有することで、職場全体の対策向上にもつながります。

5. 自己防衛の心構え

「患者さん第一」という意識は大切ですが、理不尽な扱いを我慢し続けることは、自分自身を守ることにはなりません。また、不適切な対応を受け入れることで、相手の行動がエスカレートするリスクもあります。

カスハラの経験を共有し、職場で声を上げることは、自分だけでなく同僚を守ることにもつながります。個人の声が集まることで、組織としての対策や仕組みづくりも進歩します。

厚生労働省では、個人の対応スキル向上のための研修動画やマニュアルを公開しています。これらの資料を活用して、自分自身の対応力を高めていきましょう。(参照②)

【まとめ】

・カスハラ対応では「冷静・傾聴・毅然・複数人・記録」を心がける

・一人で抱え込まず、職場の支援体制を積極的に活用する

・声を上げることが自分と職場全体を守る第一歩

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