浣腸液や経腸栄養剤など体内に注入するものを温めるというのは学生時代に学習した人は多いでしょう。その保温は本当に必要なのでしょうか。痛みの緩和のために行う保温もありますね。ここでは、保温が必要と言われてきたことが実は不要である場合や保温が必要である場合なぜ保温するのかを紹介したいと思います。
①浣腸
看護学生の頃、浣腸液は温めて使用すると習いませんでしたか。かならずしも温めて使用しなければならないわけではありません。常温に保存されていたものであれば温めずそのまま使用することもあります。
そもそもなぜ浣腸液を温めるのか。それは直腸内よりも少し高い温度の浣腸液で腸の動きを促進するためと考えられています。しかし浣腸液を温め過ぎると腸を傷めてしまう危険性もあります。準備から実際に施行するまでに浣腸液の温度が変化するため、結局適温で浣腸を施行できているケースは少ないかもしれません。注意すべきは冷たいまま使用した場合です。血圧低下や徐脈が起こるかもしれません。特に循環動態や自律神経に変動をきたしやすい患者さんには症状が出ていないか注意しましょう。日本看護技術学会では体温程度に温めることを推奨しています。※1
②帯状疱疹
帯状疱疹は痛みを伴う厄介な病気ですが、神経痛の訴えがあった場合、保温が望ましいと考えられています。
それは温めることで血流を促進できるからです。痛みを感じると交感神経が優位となるため血管が収縮し循環不良が起こることが原因といえるでしょう。
帯状疱疹による痛みの訴えがあった場合は、保温してあげましょう。
③経腸栄養剤
以前は経腸栄養剤は温めて注入していましたが、実は保温は不必要です。
経腸栄養剤を温める理由は冷えたものを注入すると下痢を起こしてしまう可能性があると考えられているからです。栄養剤を温めて注入開始しても時間をかけて注入をしている間に栄養剤は冷めてしまうでしょう。胃腸内に入る頃には栄養剤は保温前と同じ温度に戻っている可能性があるということです。また温めることで細菌の繁殖を助長してしまうことにもなります。そもそも下痢の原因は栄養剤の温度よりも注入の速度や濃度により発生するものと考えられており、栄養剤の保温は不必要といえるでしょう。※2
参考文献※1:
https://jsnas.jp/system/data/20200403114455_a45v0.pdf
グリセリン浣腸Q&AVer.2.0 日本看護技術学会著書 2023年1月
参考文献※2:
https://www.meiji.co.jp/meiji-nutrition-info/pdf/science/enteral/basic03.pdf
【まとめ】
①浣腸液は常温でも問題ない。
②帯状疱疹による神経痛は保温すると痛みの軽減が期待できる
③経腸栄養剤の保温は不要