体内に貯留した血液などを排出するために留置されるドレーン。「万が一抜けてしまったら、どんな対応をすれば良いのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。 ドレーンの自己(事故)抜去後の対応方法は、ドレーンの種類や患者さんの全身状態によっても異なります。今回は予期せぬドレーン抜去が起こった際の対応方法について、2つの事例をもとに紹介します。
1.不穏の患者さんが皮下ドレーンを自己抜去したケース
状況
60代男性、食道がんの手術後、個室に入室中。術後5日目の夜、モニターアラームが鳴り看護師が訪室すると、患者さんが自己抜去した皮下ドレーンを握りしめ、ベッドサイドに立っていました。興奮状態で室内を歩き回ろうとし、つじつまの合わない発言を繰り返していました。
対処
看護師は、すぐに応援のスタッフを呼び、患者さんの安全を確保しました。
ドレーンの抜去部をガーゼで抑えて、バイタルサインを確認し、抜去されたドレーンに破損がないことを確認しました。
その後、当直医へ報告し、ドレーンの抜去部をガーゼ固定して経過観察しました。皮下ドレーンの排液量が減少傾向にあり、抜去部からの排液が少量だったため、再挿入は行いませんでした。
2.患者さんの体動が激しく腰椎ドレーンが事故抜去されたケース
状況
50代女性、くも膜下出血で血管内手術を受け、腰椎ドレーンが挿入されていました。意識障害があり、体動が激しくベッド転落リスクが高かったため、ベストタイプの保護衣を着用していました。発症後14日目の夜、後頸部のドレーン固定テープが汗で剥がれているのを看護師が発見し、背部を確認すると、固定テープがめくれ上がりドレーンが全抜去されていました。
対処
すぐにドレーンの抜去部をガーゼで抑え、ベッドをフラットにしました。幸い意識レベルとバイタルサインに明らかな変化はなく、ドレーンに破損も見られませんでした。当直医に報告し、ドレーン抜去部をナート。頭部CTを撮影しました。脳室拡大や脳浮腫などの所見が見られず、その後も意識レベルや頭部CT所見に変化がなかったため、ドレーンの再挿入は行いませんでした。
重要なポイント
予期せぬタイミングでドレーンが抜去されると、周辺の臓器を損傷したり、破損したドレーンが体内に遺残するなどのリスクがあります。自己(事故)抜去が起こった際の対応方法や、起こり得る合併症については、事前にしっかりと確認しておきましょう。
【まとめ】
– ドレーン自己抜去や事故抜去の際は、迅速に患者の安全を確保し、抜去部をガーゼで抑える。
– バイタルサインを確認し、抜去されたドレーンの破損を確認。
– 状況によってドレーンの再挿入を行う可能性がある。その準備をも想定する