「この痰の色、報告したほうがいいのかな?」
新人の頃は特に迷いやすい場面ですよね。痰の色は、呼吸器に異変が起きているサインのひとつ。色だけで判断せず、背景の病態や患者の状態とあわせて観察する視点が大切です。今回は色別に見抜ける病態と、報告・ケアのポイントをわかりやすく解説します。
透明の痰(無色透明でサラサラ、においなし)

・病態:軽い炎症・アレルギー
風邪初期、喘息、後鼻漏、アレルギー性鼻炎など
・観察ポイント
咳嗽の有無と出現時期(いつから出ているか)、夜間の咳嗽増悪の有無、喘息やアレルギー既往の有無
・ケアのポイント
加湿と水分補給を促す(痰が絡まないように)
夜間の咳痰が続くようなら医師に喘息の可能性を相談
黄色の痰(粘度あり、黄色〜黄白色、時ににおいあり)
・病態:急性の感染症が疑われる
風邪後期、急性気管支炎、上気道炎など
・観察ポイント
発熱・咽頭痛・咳嗽の有無と時系列
食欲・ADLの変化
・ケアのポイント
バイタルサインの変動に注意(発熱・頻呼吸・SpO₂)
排痰困難なら体位ドレナージやネブライザーを実施
抗菌薬の指示を確認、経過観察を記録
緑色の痰(黄緑~緑、ドロッとして悪臭あり)

・病態:慢性疾患や細菌感染の進行
緑膿菌感染、副鼻腔炎、慢性気管支炎など
・観察のポイント
痰の色や量の変化(増加?悪臭?)
慢性的に痰が続いていないか?
抗菌薬の使用状況
・ケアのポイント
必要時、喀痰培養提出(医師指示)
吸引や加湿などで排痰援助を実施
茶色の痰(茶褐色、粘稠度高い、たばこのヤニ状)
・病態:過去の出血やタール性の変化
過去の出血、肺炎、喫煙者の慢性炎症
・観察ポイント
喫煙歴
過去の肺疾患(肺炎・結核・COPD)の有無
痰の変化と併せて呼吸音やSpO₂、バイタルを確認
・ケアのポイント
禁煙指導(呼吸器科医の指示のもと)
必要時、胸部X線や喀痰検査を確認する
赤・ピンクの痰(ピンク泡状/鮮紅色/暗赤色)
・病態:出血を示唆し、即医師への報告
肺がん、結核、肺水腫、気管支拡張症など
・観察のポイント
咳の強さ・持続時間
喀血との違いを確認(点状やスジ状に血液が混じる程度であれば血痰)
呼吸音、SpO₂、頻呼吸・チアノーゼの有無
・ケアのポイント
医師へ即時報告
バイタル測定と呼吸評価を並行実施
必要時、吸引や酸素投与の準備
患者の不安に対する傾聴と説明も忘れずに
【まとめ】
痰の色別サインとケアのポイントに共有するのは「いつから」「どのように」痰が出ているかを観察し、量・性状・色・におい・排出しやすさに応じてケアしましょう。
・透明:軽い炎症を疑い、加湿と経過観察
・黄色:感染兆候を疑い発熱・SpO₂などバイタルサインを確認
・緑色:慢性炎症を疑い、悪臭と既往を確認、排痰ケアも行う
・茶色:過去の出血や喫煙を疑い、X線確認の必要性を確認
・赤:出血疑い、即報告し指示を仰ぐ、バイタルサインと呼吸状態の評価