人工鼻は、挿管や気管切開をしている患者にとって、欠かせない医療機器です。
使用方法を誤ると患者を危険に晒す可能性があるため、初めて取り扱う際には人工鼻の構造や禁忌事項について、必ずチェックしておきましょう。
この記事では、人工鼻の役割と使用中に注意すべきポイントについて解説します。
・人工鼻とは
人工鼻(じんこうばな・じんこうび)は、患者の呼気に含まれる熱と水分をフィルターで捕えて吸気に再利用し、気道を加温・加湿する医療機器です。
挿管や気管切開をしている患者に使用され、本来は鼻や上気道が担っている加温や加湿、異物の除去を人工鼻が補うことで、気道の乾燥や細菌・ウイルスによる感染などを防ぐ効果が期待できます。
人工鼻には、自発呼吸用と人工呼吸器用があり、各メーカーからさまざまな製品が販売されています。
用途や特徴はそれぞれの製品によって異なるため、初めて使用する場合は製品説明書などを確認しておきましょう。
・使用中に注意すべきポイント3つ
1. フィルターがつまっていないか?

分泌物が多い場合や痰が粘稠な場合は、フィルターが詰まりやすくなるため注意が必要です。人工鼻に分泌物が溜まると、流量抵抗の増大や閉塞により、換気不良や窒息を起こす可能性があります。
人工鼻内の汚れや湿り具合などを定期的にチェックし、分泌物が溜まっていたり汚染されていたりする場合には、速やかに新しいものと交換します。
《交換頻度》
人工鼻の交換頻度は製品によって異なりますが、24時間以内の交換を推奨しているものが多いです。
明らかな汚染がない場合でも、製品説明書に記載の連続使用時間を超えないよう、新しい人工鼻と交換する必要があります。
2. 加温加湿器・ネブライザーと併用はNG

人工鼻の使用中は、加温加湿器やネブライザーを併用することができません。水分やエアロゾルによる過度な吸湿によって、人工鼻が閉塞するおそれがあるからです。
加温加湿器やネブライザーを使用する際には、人工鼻を外し、必要に応じてTピースやトラキオマスクに付け替える必要があります。
3. 分泌物が固くなっていないか?

人工鼻は加温加湿器ほどの加湿ができないため、気道が乾燥して分泌物が固くなる可能性があります。
排痰ケアを行いながら、分泌物の性状や量をよく観察し、人工鼻の使用が継続できるかどうかアセスメントする必要があります。
人工鼻は便利で取り扱いやすい医療機器ですが、使用中の観察と適切な対応は欠かせません。
人工鼻を清潔に保つとともに、患者の呼吸状態や分泌物の性状などを観察しながら、安全な呼吸管理に努めましょう。
【まとめ】
・人工鼻は気道を加湿・加温するためのもの
・分泌物が多い患者はフィルターのつまりに注意
・人工鼻と加温加湿器・ネブライザーは併用しない
・分泌物が固い場合は排痰ケア+人工鼻以外の方法も検討