初めて担当する患者さんで「この方、きちんと飲み込めるかな?」と迷った経験はありませんか?
嚥下評価は本来ST(言語聴覚士)が実施しますが、初回訪問や入院初期など、看護師が最初に観察・判断する場面も少なくありません。
今回は、看護師が安全に嚥下状態を確認するための基本的な観察手順と、報告時のポイントを紹介します。
嚥下評価の目的は、安全に経口摂取が可能かを判断し、誤嚥による合併症を防ぐことです。
特に初対面の患者さんでは、疾患や既往だけで判断せず、実際の嚥下動作の慎重な観察が大切です。
評価前の準備

嚥下テストをする前に、まず口腔内の清潔や乾燥の有無を確認します。
乾燥や痰の付着があると誤嚥しやすくなるため、事前に口腔ケアを実施しましょう。
体位は、上体を60〜80度に起こし、頭頸部が安定する姿勢を取ります。
首が後ろに反らないよう、やや軽く前傾に調整し、背部や側方をクッションなどで支えて体幹のねじれを防ぎます。
テストには中等度のとろみ(水分が安全に飲み込めるとろみ)を使用します。中等度のとろみとは、スプーンを傾けるとゆっくり「とろとろ」と流れ、フォークの歯のすき間を少しずつ通り抜ける程度。カップを傾けたあと、全体にうっすらコーティングされるように付着する状態が目安です。
とろみが強すぎると喉頭に残留し、弱すぎると気道に流れ込みやすいため、中間の粘度が安全に実施できます。
評価の進め方

利き手の反対側で喉頭隆起(喉仏)に軽く手を添え、ティースプーン1杯(約5mL)のトロミ水を口腔に入れます。
このときの観察ポイントは次の通りです。
・嚥下時に喉仏が上方向に動き、すぐ戻るか(喉頭挙上の有無)
・むせ込みや咳反射が出ていないか
・口腔内に水分が残っていないか(口腔残留)
・SpO₂の低下や口唇チアノーゼがないか
嚥下反射が起きず、水分が口腔内に残留したり、むせが強い場合は中止して医師へ報告します。
繰り返し試すと誤嚥性肺炎のリスクが高まるため、1〜2回の評価で十分です。
報告と連携

嚥下が困難と判断した場合は、食事指示を出した医師へ、
「嚥下できませんが、どうしますか?」と伝えるのではなく、
具体的で根拠のある観察情報を添えた報告をおすすめします。
「〇〇さまの嚥下状態を確認しました。トロミ水を摂取しても喉頭挙上が見られず、口腔内に残留しました。SpO₂は〇〇%で、誤嚥のリスクが高いと考えます。」
そのうえで、STへの評価依頼や経口中止の指示を受けましょう。評価後に不安がある場合は、医師や他のコメディカルと連携し、安全で安心できる食事介助をチームで行いましょう。
【まとめ】
・看護師の嚥下評価は“食べられるか”より“安全か”を確認すること
・姿勢・トロミ・量を整えて慎重に観察
・異常があれば中止し、根拠を添えて医師へ報告



