患者さんに「死にたい」と言われてドキッとした経験はないでしょうか。看護師だとしても言われると不安になったり、混乱したりすると思います。患者さんは並みならぬ辛さを感じているのではないかと考えたり、「本当に死んでしまうのではないか」、「私に話してくれたのだから何とかしないと」と思ったりするかもしれません。そこで、今回は、「死にたい」と言われたときの看護のヒントについてお伝えします。
1.「死にたい」は表現の一つと知る
患者さんにとっても「死にたい」くらい辛い状態にあり、中には「死にたい」から自分は死んでしまうのではないかと不安になっている方もいます。しかし、看護師が「死にたい」=自死すると、すぐに捉えるのは飛躍した考えかもしれせん。なぜなら、「死にたい」と実際に自傷・自死したいかは同じではないからです。死にたいと思うけど、自傷・自死したいとは思わない患者さんもたくさん見てきました。まず、ゆったりとした気持ちで患者さんに耳を傾けましょう。その中で、食事・排泄・睡眠・活動・服薬・精神状態の観察やアセスメントをしていきます。話しているうちに気持ちが和らぐ方もいます。自分を傷つけたくなったら教えてほしいことを伝え、患者さんの気持ちに寄り添いましょう。
2.「死にたい」と言われたときの反応
「死にたい」と言われたとき、無理に返答する必要はありません。無言でその場を一緒に共有することも看護だからです。患者さんのペースに合わせ、次の表出を待ってみるのも良いでしょう。中には、多くは話せない状態、質問されることが負担になる状態の患者さんもいます。在宅看護では必要な観察の質問ができないときは部屋の状況から把握します。台所やお風呂などの使用状況、ごみ箱のごみの内容、洗濯物、前回からの物の位置の移動、買い物してきたもの、利用者さんの風貌など、言語で返答を得られなくても分かることがあります。
3.全体からアセスメントをする
患者さんの身体状態、精神状態、治療状況などの全体からアセスメントをします。死にたい気持ちがあり、全身状態も悪い場合、自傷する行動をとる気力もない可能性が考えられます。十分な食事・排泄ができるよう援助しましょう。身体状態は概ね良好で精神状態が悪く、必要な治療が得られていない場合は自傷行動がとりやすい状態であることを念頭に看護にあたります。少しでも不安を感じたら、その場で独断せず、他の看護師や関係者と相談しながら関わりましょう。
患者さんによっては死にたい、自傷行為がしたい、自死したいは別々の気持ちである可能性があります。また、それらの表出がなくとも自死で亡くなる患者さんもいます。患者さんの一つの発言だけで、看護が左右される必要はなく、全体からアセスメントをしていきましょう。 「死にたい」と言われて、慌てる必要もありませんが、慌ててしまう看護師自身の気持ちも大切です。他の看護師に気持ちを表出してみるのも良いでしょう。
【まとめ】
1.死にたい」は表現の一つであることを知り、患者さんが話しをしやすい環境を整え、ゆったりとした気持ちで患者さんの話に耳を傾ける
2.「死にたい」と言われたとき、傾聴し、時間や空間の共有をすることも看護のひとつです。
3.患者さんの一つの発言に慌てず、全体からアセスメントする
4.看護師自身の気持ちの整理も必要であり、大切です。