標準予防策をわかりやすく解説|経路別予防策だけでは感染は防げない?

観察・患者対応
2026.05.20
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病棟でコロナやインフルエンザの患者さんが発生したとき「経路別予防策はしているのに、なぜ感染が拡大するの?」そんな風に思ったことはありませんか?
ガウンやマスク、フェイスシールドを着用して万全に感染対策をしているように見えても、実は土台となる「標準予防策」が抜けていることがあります。
今回は標準予防策をわかりやすく整理しながら、経路別予防策との関係を改めて考えてみましょう。

1. 標準予防策とは?わかりやすく言うと「すべての人に行う基本」

標準予防策とは、感染症の有無にかかわらず、すべての人を対象に行う基本的な対策です。血液や排泄物、嘔吐物、唾液、鼻水、創部からの浸出液などの体液には、感染症を引き起こす微生物が含まれている可能性があると考え対応します。

感染症が診断されている人は氷山の一角にすぎません。潜伏期間中であったり、無症状のまま病原体を保有していたりする「未診断の感染源」が存在することを前提にする必要があります。実は私たち医療者も、検査をしていないだけで耐性菌を保菌している可能性があります。

目の前の相手が「感染症を持っていない」と100%言い切ることは不可能です。だからこそ、標準予防策は「すべての人に、常に行う」ことが大前提になります。

2. 経路別予防策をしていると、標準予防策が抜けやすい理由

感染症の患者さんのケア時に、経路別予防策を実施している一方で、標準予防策が抜けている場面も少なくありません。経路別予防策の実施時に、標準予防策が抜けやすくなる理由は大きく2つあります。

1つ目は、防護具による安心感です。ガウンや手袋を装着し「これで大丈夫」と感じていませんか。全身を覆う装備は、私たちに無意識の安心感を与えます。

2つ目は、防護具の装着後「標準予防策のタイミング」を見えにくくさせるためです。

たとえば、尿からESBLが検出されている患者さんのケア中に、痰の吸引が必要になったとします。吸引のように体液の飛散が予測されるケアでは、標準予防策に基づきアイシールドの着用が必要です。アイシールド着用前に、装着していた手袋を外して手指衛生をし、アイシールド装着後に清潔な手袋を着用します。吸引後には、汚染された手袋やマスクの交換も必要です。

経路別予防策をしていても、標準予防策は必要です。この切り替えが曖昧になっている場面は、少なくありません。

3.標準予防策と経路別予防策の違い|土台と追加の関係

標準予防策は、車でたとえるならシートベルトのようなものです。車に乗るときは必ず着けますよね。走りながら外すことはありません。

経路別予防策は、雪の日に装着するチェーンや、雨の日のワイパーのようなものです。状況に応じて「追加する」対策です。

どんなにチェーンやワイパーを整えても、シートベルトをしていなければ安全とは言えません。同じように、標準予防策が土台として守られていなければ、経路別予防策だけでは十分とは言えないのです。

「今のケアは、標準予防策が土台になっているだろうか」。一度立ち止まって考えてみることが、感染予防の第一歩になります。

まとめ

・標準予防策は、感染症の有無にかかわらず「すべての人」に行う基本的な対策

・感染が分かっている人は氷山の一角。無症状の保菌もあり得る

・経路別予防策は“追加する対策”であり、標準予防策の代わりではない

・防護具による安心感が、標準予防策の抜けにつながることがある

・迷ったときは「標準予防策が土台になっているか」を振り返る

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