「痔瘻と痔核は何が違うの?」「痔瘻は肛門を清潔にしていないから起こるの?」と疑問に思ったことはありませんか。第115回看護師国家試験では、病態や治療に関する問題が出題されました。痔瘻と痔核を混同した受験生も多かったのではないでしょうか。痔瘻は清潔不足によって起こる病気ではなく、肛門腺を起点とした細菌感染が主な原因です。今回は国試問題を通して、痔瘻ができる仕組みと患者さんへの看護を考えます。
1. 第115回看護師国家試験の問題

基礎疾患のない患者の痔瘻について、正しいものを2つ選ぶ問題です。
1.先天性の疾患である
2.悪性腫瘍の発生がある
3.手術療法が原則である
4.上下直腸静脈の静脈瘤である
5.骨盤底筋群の虚弱が原因である
正解は「2.悪性腫瘍の発生がある」と「3.手術療法が原則である」です。
「4.上下直腸静脈の静脈瘤」は痔核の説明です。痔瘻と痔核は、どちらも痔の一種ですが、発生する仕組みが異なります。
2. 痔瘻はどのようにしてできるの?

肛門の内側には、粘液を分泌する肛門腺があります。この肛門腺に細菌が入り感染すると、肛門周囲に膿がたまる「肛門周囲膿瘍」を起こします。
膿が自然に排出されたり、切開によって排膿されたりしたあとも、その通り道が閉じず、肛門内と肛門周囲の皮膚をつなぐトンネルとして残ることがあります。このトンネル状の通り道が「瘻管」であり、痔瘻と呼ばれます。
痔瘻では瘻管が残るため、自然に治癒することは難しく、基本的には手術療法が必要です。また、長期間経過した痔瘻から、まれに痔瘻がんが発生することがあります。
3. 痔瘻は「不潔だから」起こるのではない

私が以前受け持った抗がん剤治療中の患者さんも、痔瘻を発症したことがありました。普段から清潔を大切にされていた方だったのに発症してしまい、心が痛みました。
痔瘻は、清潔にしていなかったことが直接の原因ではありません。抗がん剤治療中は、白血球や好中球の減少、粘膜障害などにより、感染防御機能が低下します。また、治療に伴う下痢などで肛門周囲への刺激が続くと、感染が起こりやすくなる場合があり、注意が必要です。ただし、原因は患者さんによって異なるため、「抗がん剤が原因」と断定せず、治療や全身状態も含めて考える必要があります。
4. 羞恥心や自責感にも配慮しよう
肛門周囲の症状は相談しにくく、患者さんが「清潔にしていなかった自分が悪い」と感じている可能性もあります。
看護師は、痛み、発赤、腫脹、熱感、排液の量・色・臭い、発熱などを観察するとともに、「不潔だから起きたわけではありません」「痛みや排液の変化は遠慮せず教えてください」と伝えることも大切です。
処置を行う際は露出を最小限にし、カーテンや室温にも配慮します。病変だけを見るのではなく、患者さんの羞恥心や自責感に寄り添うことも、痔瘻の看護の一つです。



