日々の業務に追われるなかで「ACPって、私が切り出していいのかな」「患者さんの思いを聞きたいけれど、なんて声をかければいいのかわからない」と戸惑った経験はありませんか。
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)は「人生会議」とも呼ばれ、近年ますます重要視されています。しかし、重要だとわかっていても、実際の現場ではなかなか進められないと感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、明日から実践できる、ACPの基本的な進め方と最初のひと言や関わり方のヒントをお伝えします。
1. ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の基本的な進め方と3つのステップ

ACPと聞くと、ターミナル期の患者さんに行う特別な取り組みのように感じるかもしれません。しかし実際には、病状の段階にかかわらず、すべての患者さんが対象となります。
ACPとは、患者さんが大切にしていることや価値観を、もしものときに備えて前もって医療者や家族と共有しておくこと。そして、治療の選択や健康状態が変化したときに「共有してきた思い」をどう医療に反映させるかを、繰り返し話し合いながら一緒に考えていくことを目的としています。
難しく考える必要はありません。日々の関わりの中で、次の3つのステップを意識してみましょう。
ステップ1:今の病状について一緒に考える
まずは、患者さんが現在の病状をどのように受け止めているのかを知ることが大切です。「今のお身体の状態について、どう感じていますか?」といった問いかけがきっかけになります。
ステップ2:不安や疑問を尋ねる
治療やこれからの見通しについて、不安や疑問を抱えていることも少なくありません。患者さんが安心して話せる雰囲気をつくりながら、思いを引き出していきます。
ステップ3:療養や生活で大切にしていることを尋ねる
「これからの生活で、どんなことを大事にしたいですか?」という問いは、価値観を知るヒントになります。答えは一度で決まるものではなく、関わりのなかで少しずつ見えてくる場合もあります。
この3つを意識するだけでも、ACPは特別なものではなく、日常の延長にある取り組みになります。
2. 看護師でも実践できる患者・家族への声かけの具体例

ACPの切り出し方は、難しく感じますよね。「あなたの大切なことは何ですか」と突然尋ねるのは、患者さんにとっても戸惑いにつながるかもしれません。
特別な話し合いとして構えすぎず、日々の関わりの中に自然に組み込めると良いですね。
たとえば、バイタル測定や症状観察の際に「今のお身体のことで、気になっている点はありませんか?」「治療について、不安に感じていることはありませんか?」といった問いかけから始めてみましょう。
また、退院調整や今後の治療について説明があった後など、これからの生活を考えるタイミングもきっかけになります。「退院後の生活で、心配なことはありますか?」とやわらかく尋ねましょう。「これからの過ごし方で、大事にしたいことがあれば教えてください」と続けると、患者さんの価値観や希望が少しずつ見えてきます。
大切なのは、答えを急いで引き出すのではなく、安心して思いを話せる関係性の構築です。日々の小さな対話の積み重ねが、ACPの第一歩になります。
3. チームで進めるACP|先輩看護師への報告で押さえたいポイント

ACPは一人で抱えるものではなく、チームで共有しながら進めていくものです。だからこそ、先輩看護師への報告の仕方がとても大切になります。
「患者さんがこう言っていました」と言葉だけを伝えると、その後どう話を広げていけばよいのかが見えにくく、話し合いにつながらない場合があります。
報告の際は、どのような状況でその言葉が出たのか、その時の表情や様子をあわせて伝えるのがポイントです。背景を共有すると、患者さんの気持ちの揺れや本音がより具体的に伝わります。
たとえば、血液疾患で多臓器不全の状態にあり、ドレーンが複数入っている患者さんが「孫の運動会を見に行きたい」と話されたことがありました。その言葉は、バイタル測定の際に、家族の話をしながらたわいない会話の中でぽつりと出たものでした。一見ささいで、見落としかねない言葉にも、ふいに大切にしている思いが表れるものです。
このように、どのような場面でその言葉が出たのか背景もあわせて伝えると、患者さんの思いがより具体的に共有され、チームとしての関わりにつながります。実際にこの患者さんは、医学的には外出が難しい状況でしたが、思いが共有され、チームで検討する機会となり、外出が叶ったのです。このような思いがきっかけとなり、その人らしい時間につながります。
完璧なまとめや結論を出そうとしなくて大丈夫です。気づいた思いや違和感を、状況とあわせた共有が、ACPを進めるうえで大切な一歩になります。があると私は感じました。そのに気づいてから、訪問看護の面白さが少しずつ分かってきたように思います。
まとめ
・ACPはターミナル期だけでなく、すべての患者さんが対象となる取り組み
・特別な面談ではなく、日々の関わりの中で少しずつ思いを聞いていくことが大切
・「今の気持ち」や「不安」を尋ねることが、ACPの第一歩になる
・価値観を無理に引き出そうとせず、安心して話せる関係づくりを意識する
・先輩への報告は「言葉」だけでなく「場面や背景」も一緒に伝える
・完璧な答えを出そうとせず、チームで共有することを大切にする



