バンコマイシンの血中濃度採血の指示が出たときに「必ずこの時間で採血してね」と言われ、「どうして時間通りに採血しないといけないの?」と疑問に思ったことはありませんか?
他の抗菌薬では細かく採血のタイミングを指示されないことも多く「なぜバンコマイシンだけ?」と思ったこともあるのではないでしょうか。
バンコマイシンは、血中濃度を測定しながら投与量を調整する薬剤です。そのため、決められた時間に採血をしないと、正しい評価ができません。
今回は、バンコマイシンの採血タイミングとトラフ値・血中濃度の基本を、現場で困らない視点からわかりやすく整理します。
1. バンコマイシンの血中濃度(TDM)とは?

血中濃度(TDM:Therapeutic Drug Monitoring)とは、薬の血液中の濃度を測定し、適切な投与量を調整する方法です。バンコマイシンは腎毒性がある薬剤で、血中濃度が高すぎると腎機能障害のリスクが高まります。一方で、血中濃度が低すぎると治療効果が不十分となり、耐性菌の出現につながる可能性もあります。投与量が多すぎても少なすぎても問題となるため、血中濃度を測定しながら慎重に調整する必要があるのです。
2. バンコマイシンの血中濃度採血はいつ?「3~4日目(または4~5回目投与直前)」
バンコマイシンは主に腎臓から排泄される薬剤です。投与を繰り返すことで、血中濃度は徐々に一定の範囲に落ち着いていきます。この安定した状態を定常状態といい、一般的には初回投与からおよそ3〜4日目(4〜5日目投与直前)で到達するとされています。ただし、患者さんの腎機能や投与プランによってタイミングが前後するため、個別の指示を確認することが重要です。
3. 採血はなぜ「投与直前(トラフ値)」なのか?

投与直前は、前回投与したバンコマイシンの血中濃度が最も低くなるタイミングです。この最低値を「トラフ値」といいます。トラフ値を確認することで、薬が効く濃度を保てているか、あるいは過剰投与になっていないかが判断可能です。血中濃度が低すぎると治療効果が不十分となり、耐性菌出現のリスクが高まります。一方で高すぎると、腎障害などの副作用につながる可能性があります。そのため、投与直前のトラフ値を基準に、次回以降の投与量を調整するのです。
4. 【注意点】投与時間がずれたときの採血はどうする?

バンコマイシンの投与時間がずれてしまった場合も、基本は「次回投与直前」で採血するという原則は変わりません。たとえば、バンコマイシンの投与時間の指示が、9:00~10:00、21:00〜22:00の場合で考えてみます。実際の投与が、9:30開始にずれてしまった場合、次回も本来のスケジュールより遅らせて投与するのか、あるいは調整して戻すのかの判断が必要です。いずれにせよ、採血の原則は「次回の実際の投与開始直前」に行うことです。「予定では21時だったから」と思い込んで採血すると、正確な評価ができないことがあります。採血時間は「予定時間の直前」ではなく「実際の投与時間の直前」と覚えておきましょう。正確な投与時間を記録に残し、医師や薬剤師に確認しながら対応することが大切です。
まとめ
・バンコマイシンは治療域が狭くTDMが必要
・初回採血は3〜4日目(または4〜5回目投与直前)
・採血は必ず次回投与直前(トラフ値)
・投与時間がずれた場合は、実際の投与時間を基準に採血を考える
・迷ったら医師・薬剤師へ確認



