膀胱留置カテーテルを挿入している患者さんが、頻繁に尿意や残尿感を訴えることがあります。カテーテルの違和感や尿意、残尿感は患者さんにとって不快であり、自己抜去に至るリスクも伴います。今回は、膀胱留置カテーテルを挿入している患者さんの尿意に対するケアの工夫を事例を通して紹介します。
事例

食道がんの手術後、ICUに入室した60代男性。術後、膀胱留置カテーテルが挿入されましたが、帰室後から強い尿意を訴え、「トイレに行きたい」と何度もナースコールがありました。カテーテルは適切に機能しており、尿も問題なく排出されていることを説明しましたが、患者は一晩中「おしっこが出ない」と不安を訴え続けました。術翌日も尿意や残尿感の訴えが頻繁にあり、カテーテルの早期抜去を強く望んでいました。
膀胱留置カテーテルが挿入されている理由
高侵襲な食道がんの手術では、術後利尿期に循環動態が大きく変動するおそれがあります。このため、IN-OUTバランスを観察する必要があり、カテーテルの抜去は利尿期を過ぎて循環動態が安定する術後5日目頃から可能となっていました。今回の事例で実施した対処方法は次の5つです。
対処方法

1.カテーテル内の尿を小まめに誘導する:
定期的にカテーテルの尿の流出を促進し、尿路感染症の予防と残尿感の軽減に努めました。
2.カテーテルの固定位置を調整する:
長期間カテーテルを使用する場合、腹部への固定が一般的ですが、適切な固定位置は患者ごとに異なります。違和感を最小限に抑えるために、患者と話し合い、最適な位置を見つけて固定します。
3.温罨法の活用:
下腹部を温めることで筋肉の緊張が和らぎ、尿意がある時の不快感を軽減します。ただし、腹部の手術の場合、温罨法を行う前に医師の指示を必ず確認してください。
4.流水音を利用する:
患者は排尿が出にくいという感覚がありました。流水音を聞くことで排尿しやすくなる感覚があったため、陰部洗浄時に差し込み便器を使用し、流水音が聞こえるよう工夫しました。この方法により、カテーテルを挿入していても排尿できているという安心感や、爽快感が得られたようです。

5.実際のトイレ訓練を行う:
離床が可能になった際は、尿意があるタイミングでトイレに座る訓練を行いました。腹圧がかかることで尿漏れの可能性がありますが、尿取りハットを設置してからトイレに座ってもらい、尿漏れが起きても対応できるようにしました。
この患者は術後6日目にカテーテルを抜去し、尿意や残尿感が徐々に改善されました。これらの介入を看護の実践で活用し、患者ケアの質を向上させてください。
【まとめ】
・尿を小まめに誘導
・固定位置を適宜変更
・下腹部を温める
・流水音を聞く
・尿意があったらトイレへ