認知症の患者さんに「いや!やらない!」と採血や処置を拒否されたとき、どうしたらいいかわからず困った経験はありませんか?看護師経験の浅い病棟勤務時代の私は「少しだけ我慢してください」と説得しようとし、患者さんを興奮させてしまったことが何度もあります。看護師歴20年を超えた今は、訪問診療同行看護師として採血をする機会が増え、採血や処置を拒否する患者さんへもスムーズに対応できるようになりました。そんな私が身につけた拒否への対処法をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
なぜ拒否するのか
認知症の患者さんは、処置の意味や必要性を理解することが難しい場合があります。突然体に触れられる恐怖や、見慣れない器具への不安が重なって、強い拒否につながることがあります。なかには、入院していることや、訪問診療を受けていること自体を認識できていない患者さんもいます。知らない人が突然やってきて体に触れようとしているように感じれば、拒否するのも当然といえるかもしれません。こうした拒否は「困った行動」ではなく、不安や恐怖のサインです。
説得を続けると逆効果になることも
「すぐ終わりますから」「痛くないですよ」と繰り返しても、状況を理解できていない認知症の患者さんには伝わりにくいことがほとんど。病棟勤務時代の私も、処置を終わらせることに必死で説得を繰り返した結果「やめて!」と手を振り払われ、収拾がつかなくなった経験があります。そもそも採血や処置を受け入れてもらうには、患者さんに安心して身を委ねてもらう必要があります。その信頼を短い時間の中で築くには、言葉での説得よりもまず気持ちをほぐすことを心がけましょう。
現場で使える3ステップ
認知症の患者さんの気持ちをほぐし、採血や処置を行うまでの3ステップは次のとおりです。
①別の話題で気持ちをほぐす

採血や処置の話をいったんやめて、別の話題で声をかけます。私がよく使うのは、お部屋に飾ってあるものや着ているお洋服への一言です。「素敵なお花ですね、なんというお花ですか?」と話しかけたら、嬉しそうに花の名前を教えてくれて、そこから会話が弾んだこともありました。ご家族のことや過去のお仕事のことでも話題としてはバッチリ。困ったときは「今日は暑いですね」など、患者さんが答えやすい天気の話題でもOKです。
②相手の話に共感して乗っかる

患者さんが話し始めたら「そうなんですね」「それは嬉しいですね」と共感しながら患者さんの話題に合わせます。昔のお仕事の話や家族の話が出てきたら「どんなお仕事をされていたんですか?」などと興味を持って聞いてみましょう。認知症の患者さんでも、昔の記憶はしっかりあることも多いので、掘り下げて聞いてみることは重要です。この「共感して話題に合わせる」工程を惜しんではいけません。場の雰囲気をほぐす大切なステップです。
③雰囲気が和らいだら、処置の話へ

表情が和らいで会話が弾んできたタイミングで「血液の検査があるのですが、ちょっとだけ腕を見せてもらえますか?」と自然につなげます。話の流れのまま、スッと腕を出してくれることがあります。このとき焦りは禁物です。会話がまだ盛り上がっているのに強引に処置の話へ切り替えると、せっかくほぐれた雰囲気が台無しになることもあります。うまくいかないときは、その場を一度離れて時間をおいてから戻ることも、有効な選択肢のひとつです。
まとめ
・認知症の患者さんの処置拒否は、不安や恐怖のサイン
・言葉での説得より、まず気持ちをほぐすことが先決
・①検査や処置の説明ではない話をする②共感して患者さんの話題に合わせる。③和らいだら処置へ
・処置の前に信頼関係を作ることが成功のカギ
・うまくいかないときは一度引いて、時間をおいてから戻る



