頻尿や尿失禁がある患者さんに対して、十分なアセスメントとケアが行えていますか?看護記録を振り返ると、バルーン抜去後の排尿確認や尿量の把握など、出ていないことに対する観察や記録は丁寧に行われている一方で、頻尿や尿失禁については事実の記録のみで終わっているケースも少なくありません。排尿ケアは、患者さんの生活の質を大きく左右する重要なケアのひとつです。そのため、なぜ起きているのかを考えたアセスメントが欠かせません。この記事では、排尿アセスメントの基本である観察のポイントと、残尿測定(腹部エコー)の活用法について、わかりやすく解説します。明日からの看護にぜひ活かしてみてください。
1. 排尿アセスメントとは?なぜ重要?
排尿アセスメントとは、頻尿や夜間頻尿、尿意切迫、尿失禁、排尿困難、膀胱痛などの症状について、原因や背景を含めて総合的に評価することです。排尿は患者さんの尊厳に深く関わり、生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。そのため、適切に評価されないまま放置されると、日常生活への支障だけでなく、精神的な負担にもつながります。さらに、尿閉(尿が出ない状態)や多量の残尿を見逃すと、膀胱機能の低下に加え、水腎症や腎機能障害、尿路感染症の悪化などを引き起こす可能性もあります。重症化した場合には、敗血症になるリスクも否定できません。このようなリスクを防ぐためにも、排尿状態を早期にアセスメントし、原因に応じた適切なケアにつなげることが重要です。
2. 何を診る?排尿アセスメントの5つの項目

排尿アセスメントは、以下の5つの項目を軸に整理すると全体像を把握しやすくなります。
①症状:日中および夜間の排尿回数、尿意切迫感の有無、排尿時痛・蓄尿時痛、尿の勢い、排尿開始までの時間の遅れ、腹圧排尿の有無(お腹に力を入れないと尿が出ない)などを確認します。失禁がある場合は、その頻度や量、尿取りパッドの使用状況も把握しましょう。
②病歴:神経疾患や糖尿病、骨盤内手術の既往歴に加え、排尿に影響を与える薬剤(降圧薬、抗アレルギー薬、便秘薬、利尿薬など)の使用状況も重要な情報です。
③排尿記録:2〜3日連続して、排尿・失禁時刻、尿量、水分摂取量などを記録します。客観的な排尿パターンを把握するうえで有用ですが、現場で抜けがちな視点でもあります。
④身体所見:下腹部の膨隆や、女性の場合は骨盤臓器脱(膣外への突出)などを観察します。身体所見も重要な情報であるにもかかわらず見落とされやすいため、意識して確認することが大切です。
⑤尿検査:尿路感染症、尿路結石、膀胱がんなどを鑑別するための重要なスクリーニングです。
3. 腹部エコー(残尿測定)の重要性

残尿測定は、排尿直後に膀胱内にどれだけ尿が残っているかを確認する検査です。高齢者や認知症のある患者さん、急性期の患者さんでは、尿意を正確に伝えられなかったり、自覚症状がないまま尿閉を起こしていることがあります。
また、おむつに失禁があるからといって安心していると、実際には膀胱内に多量の尿がたまり、あふれているだけの溢流性尿失禁であるケースも少なくありません。このような場合、腹部エコーを用いること、膀胱内にどの程度尿が貯留しているかを可視化できます。
尿の産生状況や排尿の状態を客観的に把握できるため、アセスメントの精度が高まります。その結果、単なる定時のオムツ交換ではなく、適切なタイミングでのトイレ誘導や導尿の判断など、患者さんに合わせた個別性のある排泄ケアにつなげることが可能になるのです。
さらに、残尿確認のために安易に導尿を行うと、患者さんの苦痛や尿路感染症のリスクが伴います。そのため、腹部エコーを活用すると、膀胱内の尿量を非侵襲的に把握でき、不要な導尿を避けるられます。
4.【症状別】エコー結果のアセスメントのポイント

①尿閉・排尿困難
腹部エコーで残尿が多い場合、前立腺肥大症や排尿筋低活動、神経陰性膀胱などが疑われます。残尿が100mL以上ある場合は、医師に報告し、泌尿器科など専門医への相談を検討します。
また、膀胱内に400mL前後以上の尿が貯留しているにもかかわらず排尿できない場合は、尿閉の可能性があり、医師への報告や導尿などの対応を検討します。
②頻尿・尿失禁
残尿が100mL未満で頻尿や尿失禁がみられる場合は、過活動性膀胱などが考えられます。生活指導や膀胱訓練、骨盤底筋訓練、薬物療法などの検討につながります。
一方で、残尿が多いにもかかわらず失禁がある場合は、溢流性尿失禁の可能性があります。この状態で過活動膀胱治療薬(抗コリン薬)を使用すると、症状が悪化するリスクがあるため、エコーによる残尿確認が重要です。
③レッドフラッグ
レッドフラッグとは、排尿習慣の問題ではなく、器質的疾患や重篤な病態を疑い、専門医への対応が必要となる危険な兆候を指します。
主な例として以下が挙げられます。
- 尿閉、多い残尿量(目安:100mL以上)
- 肉眼的血尿、尿細胞診陽性
- 発熱を伴う膿尿、再発性尿路感染症
- 骨盤部の手術歴や放射線治療歴、神経疾患の合併
- 骨盤臓器脱(膣外への突出)、下腹部膨隆
- 膀胱結石、腎機能障害、超音波検査での異常所見
- 強い膀胱痛や会陰痛を伴う頻尿
これらは、一見よくみられる症状と重なることもあるため、見逃さない視点が重要です。気になる所見がある場合は、早めに医師に相談し、適切な対応につなげましょう。
また、「尿が出ない」「尿が漏れる」といった表面的な問題として捉えるのではなく、残尿測定と5つの視点を活用し、客観的に評価することが大切です。日々の観察をアセスメントにつなげ、適切なケアへと活かしていきましょう。
まとめ
・排尿アセスメントは、症状・病歴・排尿記録・身体所見・尿検査の5項目で整理する
・頻尿や尿失禁は、事実の記録だけでなく原因を考えたアセスメントが重要
・腹部エコー(残尿測定)を活用することで、排尿状態を客観的に評価できる
・残尿量を把握することで、トイレ誘導や導尿の判断など個別性のあるケアにつながる
・溢流性尿失禁など、見逃しやすい病態の早期発見にも役立つ
・排尿トラブルは表面的に捉えず、数値と観察を組み合わせて評価することが大切



