「絶対に転ばせない!」と意気込んで、汗だくになりながら5分おきにラウンドしていた。そんな経験はありませんか?それでも患者さんが転倒し「さっき見たときは大丈夫だったのに……」と、戸惑いや焦りを感じた方も少なくないでしょう。実は私自身も、看護師2年目の頃に同じ経験をしました。この記事では、現場経験と医療安全に関わる中で気がついた、転倒予防に大事な3つの視点についてお伝えします。一緒に転倒予防を見直してみましょう。
1. 【体験談】「5分ラウンド」をすり抜けた転落事故

56床の内科系病棟で夜勤をしていた、看護師2年目の頃のことです。申し送りで日勤担当の先輩から「Aさんは昼間、少し言動がおかしかった。5分ラウンドで見てほしい」と伝えられました。Aさんは人工呼吸器を離脱したばかりで、両下肢に麻痺があり、上半身のみ動かせる状態でした。
先輩の助言を受け、私はAさんのいる4床室の入口付近にカートを配置。Aさんの部屋を拠点に業務を開始し、5分おきに訪室し、その都度様子を確認していました。
消灯10分前、Aさんがベッド上でテレビを見ているのを確認。「テレビを見ているから大丈夫だろう」と私は判断し、夜間の抗生剤を取りにナースステーションへ戻りました。
その直後「ドスン」という大きな音が響いたのです。嫌な予感がして部屋へ戻ると、Aさんはベッドサイドの床に倒れていました。
幸い外傷はありませんでしたが「動けると思ったけれど、思ったより動けなかった。テレビカードが切れたので替えようとした」と話されました。
2. この経験から学んだ転落予防の3つの視点

①「見る」から「看る」へ
転倒予防の観察では、患者さんが離床しようとしていないかを確認することも大切です。そのうえで、転倒につながる要因を先に見つけ、取り除く視点が重要になります。カーテン越しに寝ている姿を見て「大丈夫」と判断した経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
大切なのは「次に患者さんが何をしようとしているのか」「何に困っていそうか」を予測する視点です。
②患者の「自立」を支える環境調整
Aさんは下半身に麻痺がある一方、上半身は自由に動かせました。また遠慮がちな性格で、ナースコールを押す際も「申し訳ない」と口にされる方でした。
当時、テレビは患者さんの足側に設置されていました。もし、無理なく手が届く位置に調整できていれば、転落は防げたかもしれません。
患者さんの身体状況や性格を踏まえた環境調整も、重要な転倒予防です。
③「声かけ」の質を変える

「何かあったら呼んでください」という声かけは、一見親切ですが、患者さんにとっては曖昧です。「トイレに行くときは呼んでください」「体を起こしたくなったら声をかけてください」など、具体的な行動を示す声かけが必要です。Aさんにも「テレビカードの残量、確認しましょうか」と一言添えていれば、患者さんが無理に動こうとしなかった可能性があります。
転倒予防のラウンドでは、回数ではなく「何を見るか」を意識することが大切です。そのためには、患者さんの生活を想像し「次に何をしようとしているか」を先読みする視点が欠かせません。
転倒を防げなかったとき、私たちは自分を責めがちです。ですが、大事なのは「次はどう環境を変えればいいか」を考えることです。明日からのラウンドでは、ぜひ「患者さんの目線」で部屋を眺めてみてくださいね。
まとめ
転倒予防の3つの視点
・遠慮を生まない具体的な声かけ
・行動を予測するアセスメント
・ニーズを先回りする環境調整



