医療職として考える治療の必要性と患者さんが抱く個人の思いとの間で、葛藤し悩んだことはないでしょうか。治療が必要と考える私たち看護師と、自身の生き方や価値観を大切にして治療を拒否される患者さん。「単なる拒否」ではなく、拒否の背景には患者さんの思いが隠されています。私たちはその気持ちに耳を傾け、心に寄り添うことが大切なのではないでしょうか。この記事では私が新人看護師のときに経験した葛藤と、その葛藤からの学びについて書きたいと思います。
1.酸素療法を拒否する患者さんとの出会い

新人看護師だった頃、COPDで酸素療法が必要なAさんを受け持ちました。Aさんは高齢女性でとても綺麗に身なりを整えている方。Aさんは酸素チューブをつけることを拒否し「こんなチューブつけたくない、見栄えが悪いじゃないの」「こんなことまでしないと生きられないなら死んだ方がまし」と何度も訴えていました。当時の私は、酸素を装着しなければ呼吸状態が悪化する可能性があるため「なぜ必要な治療を受けられないのだろう」と戸惑いを感じていました。
2.命を守りたい医療職の思いと患者さんの思い

新人だった私は、Aさんの病状から酸素療法をするのが望ましいと考えていました。そのため、なんとか理解してもらおうと、酸素療法の必要性を繰り返し説明していました。しかし、なかなか受け入れてもらえず……。Aさんとのコミュニケーションを続けるなかで、Aさんは気丈な方で、見た目をとても気にされ、酸素チューブの装着が大きな苦痛になっていると気づきました。当時の私は疾患や治療しか見えていなかったのです。患者さんは病気を抱えながらも自分らしく生きることを望んでいたのだと後になって気づきました。
3.いまの看護に活かされている学び

私はAさんとのやりとりの経験から、看護師として正しいと思うことを伝えるのが、必ずしも適切な看護ではないと感じました。患者さんそれぞれの価値観や人生観があり治療の受け止め方も異なります。いまなら、患者さんが「なぜそのような思いを抱いているか」背景に目を向けることを意識します。もちろん患者さんの安全を守ることは大切ですが、患者さんの気持ちを理解しようとする姿勢も同じくらい重要です。新人時代に感じた医療職としての葛藤は、いまの私に患者さん一人ひとりの想いに寄り添う大切さを教えてくれた貴重な体験となっています。
まとめ
1.治療を中心とした看護師の思いと自分らしく生きることを優先したい患者さんの思いの違いを見つめる
2.正しいことであったとしても看護師の価値観を押し付けることが正解ではない。
3.「なぜその思いに至ったのか」という背景に目を向ける。



