人工呼吸器を装着している患者さんは、人工呼吸器関連肺炎(VAP)を発症するリスクが高いことが知られています。VAPの予防策の一つとして広く推奨されているのが「頭部挙上」です。しかし、現場では頭部挙上の角度が適切に保たれていなかったり、体位変換後に背上げ角度が変わってしまったりする場面も少なくありません。ただベッドの背上げを行うだけでは、十分な予防効果が得られない場合もあります。今回は、人工呼吸器関連肺炎を予防するために、頭部挙上で押さえておきたい3つのポイントを解説します。
1. 人工呼吸器関連肺炎と頭部挙上の関係を理解しよう

VAPとは、気管内挿管下で人工呼吸器装着を開始し、48時間以降に新たに発生する院内肺炎のことです。口腔内や咽頭に存在する細菌を含んだ分泌物や胃内容物が下気道へ流れ込むことが発症の大きな要因となります。人工呼吸器装着中は気管チューブによって本来の防御機能が低下し、細菌が肺へ侵入しやすい状態です。特に仰臥位では胃内容物が逆流しやすく、不顕性誤嚥のリスクが高まります。頭部挙上は、分泌物や胃内容物の逆流を抑え、細菌の気道への流入を減らす効果が期待できるケアです。日常的に実施しやすいケアですが、予防策として実施する際は適切な角度を保つことが重要です。
2. 適切な頭部挙上角度を確認しよう

VAP予防で推奨されている頭部挙上の角度は、30〜45度です。「だいたいこれぐらい上がっていれば大丈夫」と感覚だけで設定するのは避けましょう。推奨角度が確保できない場合は、十分な予防効果が得られない可能性があります。そのため、角度計などを活用して適切な角度になっているか確認しましょう。ただし、循環動態が不安定な患者さんや脳神経疾患などで安静度に制限がある場合は、主治医の指示や患者さんの状態や治療上の制限、医師の指示を確認し、無理のない範囲で実施することが重要です。
3. ケアや体位変換後も頭部挙上を維持しよう

頭部挙上は一度ベッドの角度を設定すれば終わりではありません。吸引や清拭、体位変換などのケアによってベッドを操作したあと、背上げ角度が下がったままになっていることがあります。ケアが終わったら、必ず30〜45度に戻っているか確認しましょう。この一連の習慣が、VAP予防につながります。また、頭部挙上によって患者さんの身体が足元側へずり落ちていないか、苦痛が生じていないかを確認することも大切です。
頭部挙上は、日常の看護ケアのなかで実践できる基本的なVAP予防策の一つです。適切な角度に設定するだけでなく、ケアや体位変換後にも確認し、継続して維持できるようチーム全体で取り組みましょう。
まとめ
・頭部挙上は、分泌物や胃内容物の逆流を抑え、VAP予防につながる
・頭部挙上は30〜45度を目安にし、適切な角度になっているか確認する
・ケアや体位変換後はベッド角度を再確認し、頭部挙上を維持する



